白耳義通信 第111回
生ゴミ回収が始まった、ベルギーの新年
連載 2026-01-15
鍵盤楽器奏者 末次 克史
新しい年が始まり、半月ほどが過ぎました。街の空気も、生活のリズムも、少しずついつもの調子に戻りつつあります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年の1月、わたしの住むメヘレンの冬は例年と同じように寒かったのですが、暮らしの中ではいくつか小さな変化が重なりました。キッチンには、生ゴミ専用の小さなバケツと紙袋。街では、生ゴミ回収が有料になり、分別の仕方も少し変わりました。
ベルギーではこの1月1日から、ゴミ回収だけでなく、いくつかの制度が同時に動き始めています。失業給付の仕組みが見直され、事業者には電子インボイスが義務化されました。税制や控除の扱いも少しずつ変わり、「これまで通り」が通用しなくなる場面が増えているように感じます。
そんな中で始まったのが、生ゴミを混合ゴミから切り離す仕組みです。回収は専用のコンテナで行われ、回数と重さに応じて料金がかかります。「出した分だけ支払う」方式で、善意に頼るというより、日々の行動が自然に変わることを期待した設計のようです。

生ごみ専用のコンテナ

我が家の場合、生ゴミ回収にかかる費用は、月にして5〜8ユーロほどになっています。外食を一度控えるくらいの金額、と言えば分かりやすいでしょうか。
日本では、ゴミ処理の費用は税金や指定ゴミ袋の代金として、あまり意識せずに支払っていることが多いと思います。一方こちらでは、「いつ、どれくらい出したか」が数字として見えてきます。その違いは、思っていた以上に感覚に残ります。だからでしょうか、ゴミを出すという行為そのものが、少し立ち止まって考える時間になるように感じられます。
分別の決まりも細かく定められています。紙袋は使えますが、生分解性プラスチックの袋は使えません。環境に良さそうに見えても、実際の処理工程で対応できないものは認めない。ここでも「イメージ」より「運用」が重視されているようです。
集められた生ゴミは焼却されず、発酵によってガスが取り出され、エネルギーとして使われます。残ったものは堆肥となり、土に戻っていきます。キッチンから出たゴミが、街のどこかで別の役割を果たしていると考えると、不思議な気もします。
制度や仕組みは、気づかないうちに少しずつ変わっていきます。今年のベルギーは、ゴミ、働き方、税の扱いと、身近なところからその変化が見え始めた年なのかもしれません。
キッチンの小さな紙袋は、そんな「変わり目」の空気を、毎日の暮らしの中で静かに伝えてくれています。
本年も、この場所から、ベルギーの日常を少しずつお届けしていけたらと思います。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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