2030年にバイオマス由来の合成ゴム実用化目指す
横浜ゴム、バイオエタノールからブタジエンを生成
タイヤ 2019-07-23
横浜ゴムは7月22日、産業技術総合研究所(産総研)と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)との共同研究で、インフォマティクス(情報科学)を活用しバイオエタノールからブタジエンを生成する世界最高の生産性を有する触媒システムを開発し、生成したブタジエンを使ったブタジエンゴムの合成にも成功したと発表した。
タイヤの主原料のひとつである合成ゴムの元となるブタジエンは現在、石油精製の副産物として工業的に生産されているが、バイオマス(生物資源)からの生産技術の確立により石油への依存度低減やサステナブルな原料調達の促進が期待できる。
今回の開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の委託事業として実施したもの。
超超PJでは計算科学や人工知能(AI)を積極的に活用することで、従来の経験と勘を頼りにした材料開発と比較して開発期間を20分の1に短縮することを目指している。
今回、超超PJが推進する「計算科学技術」「プロセス技術」「先端計測技術」の三位一体での開発を進め、まず「計算科学技術」においてバイオエタノールからブタジエンをより多く生成できる金属酸化物触媒を探るため、AIを使用した量子化学計算による一次スクリーニングを実施。
バイオエタノールからブタジエンを生成するには複数段階の反応を経る必要があるが、それを5段階に分けて各段階の反応を緻密に計算したところ、特定の金属酸化物の組み合わせが最適であることを導き出した。
次にそれらの最適な配合状態や反応条件を探索するため「プロセス技術」「先端計測技術」において、複数の条件下で試験する迅速触媒評価とそれぞれの反応性を高速に計測するハイスループット実験を行い、活性成分の触媒用担体(触媒の微粒子を支える多孔質の物質)における分布や量などの触媒調製条件や温度などの反応条件における最適解を発見した。
これは世界最高の生産性を有する非常に高活性な触媒システムの極めて短期間での発見となり、触媒開発におけるインフォマティクスの有用性の実証にも成功した。
今後はより高度なAI技術による計算科学をベースとしたキャタリストインフォマティクス(産総研が提唱している触媒化学と情報科学を融合させた学際領域)の基盤を構築するとともに、多検体高速同時評価と高速計測技術を連携させたハイスループット実験を通して、2030年のバイオマス由来の合成ゴム実用化を目指す。
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