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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場、上海ゴムが年初来安値更新

連載 2017-05-19

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、連休中の上海ゴム相場の急落を受けて一時1キロ=204.50円まで軟化し、4月20日以来の安値を更新した。しかし、その後は円安や原油高、上海ゴム相場の下げ渋りに支援され、210円台中盤まで下げ幅を削る展開になっている。

 連休前の上海ゴム相場は1トン=1万5,000元の節目を回復していたが、5月4日に突如急落し、年初来安値を更新する1万3,000元台までコアレンジを切り下げている。

 天然ゴムの需給環境には特段の大きな変化は見られなかったが、鉄鉱石や石炭相場なども同時に急落しており、中国コモディティ市場からの資金引き揚げ傾向の継続が強く窺える状況になっている。

 中国では、習国家主席が金融システムのリスク管理を強化するために、党中央政治局の会合開催、金融監督機関トップとの協議などの場で、システミックリスクの防止を指示している。このため、金融規制措置強化の思惑から投機マネーの流動性は急速に低下しており、需給動向とは関係なく上海ゴム相場は値下りしやすくなっている。昨年は大量の流動性供給が天然ゴム相場のバブル的な高騰相場を促したが、その流れが180度転換してしまっていることが確認されている。

 少なくとも秋の中国共産党大会までは、こうした金融環境が大きく変わる可能性は低く、上海ゴム相場の高騰を促す可能性がある投機資金の流動性は急速に失われている。

 このため、仮に上海ゴム相場主導の急伸があるとすれば需給要因になるが、産地主導の値上がり圧力は確認できていない。タイ中央ゴム市場の集荷量などは今季最低水準にまで落ち込んでいるが、現段階ではゴム農家から安値に強い抵抗もみられず、上海ゴム相場主導の相場展開が続いている。

 5月8日に発表された中国の4月貿易収支では、輸出・輸入ともに予想以上に伸びが鈍化していることが確認されている。中国のマクロ経済環境は決して悪くないが、政策引き締めによって内需にはブレーキが掛かっており、天然ゴムや鉄鉱石の輸入が鈍化し始めている。中国金融政策の急激な変化が、天然ゴムの価格のみならず需要環境にも影響を及ぼし始めている模様だ。

 下げ過ぎ感の強さから自立反発も警戒されるが、円安や原油高といった強気の外部環境でも上値の重さが確認されている相場である。戻り売り優勢の地合を崩すのは難しくなっており、産地でコスト論などの視点から下げ相場に抵抗がみられる価格水準を打診する展開が続きやすい。

(マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努)

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