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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海高と円安で値上がり

連載 2022-06-13

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=260円台中盤まで値上がりする展開になった。上海ゴム相場の上昇地合が続く中、上値追いの展開が維持された。引き続き中国経済活動の正常化期待を織り込む動きが優勢になっている。為替相場が大きく円安方向に振れたこと、原油高や産地相場高が続いていることもポジティブ。4月18日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台中盤まで小幅上昇する展開になった。利食い売りが膨らむ場面も見られたが、押し目買い優勢の地合が維持されている。4月19日以来の高値を更新している。

 中国経済の正常化期待を織り込む展開が続いている。新型コロナウイルスの感染被害が収束方向に向かう一方、大型経済対策が打ち出されていること、中国人民銀行(中央銀行)が緩和的な政策スタンスを示していることなどが、ゴム需要の拡大期待に直結している。ロックダウン(都市封鎖)の緩和による自動車販売・生産環境の正常化期待が強いことに加えて、新車販売拡大やインフラ投資などの経済対策もゴム需要の回復ペースを加速させるとみられている。

 中国経済の減速は避けられない。世界の新車生産・販売環境は必ずしも良好とは言えないとの見方から調整売りを進める動きも見られたが、少なくとも短期的には需要環境のV字型回復が見込まれていることがゴム相場を支援している。こうした傾向は鉄鉱石や非鉄金属市場などでも観測されており、中国経済の正常化期待を一段と織り込む余地があるか否かが焦点になる。

 産地相場は乱高下する不安定な地合になったが、堅調地合を維持している。タイ中央ゴム市場の現物相場は、6月9日時点でUSSが前週比3.3%高の1キロ=67.38バーツ、RSSが同0.4%安の70.51バーツとなっている。産地では引き続き降雨過多の傾向が強く、USSは低集荷環境にサポートされる展開が続いている。ただ、RSSに関しては6月入りしてから集荷量の増加傾向が報告されており、高値更新サイクルは維持されているが、前週比ではほぼ横ばいの展開になっている。産地相場環境の評価は割れ始めている。

 ゴム需給以上に注目度が高くなっているのが為替相場の動向だ。日米の金融政策環境の格差が一段と明確化する中、円安・ドル高傾向に歯止めが掛からない状況になっている。5月下旬の1ドル=127円水準から足元では2002年2月以来の円安・ドル高水準となる133円水準まで値上がりが進んでいる。円建て資源価格が全面高の展開になる中、ゴム相場も為替要因で上昇ペースが加速した。

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