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【特集】モビリティを支えるゴム企業

「アキレス」、日本で唯一、合成皮革と同製法のPVCレザーで車内空間に高級感を

ラバーインダストリー New! 2026-05-11

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 「製膜」、「発泡」、「成型」。これら3つのコア技術を生かし、ゴムや樹脂から多様な製品を生み出すアキレス。その製品群は、自動車のシートに使用される合成皮革といった“車輌内装材”にまで及ぶ。同製品は生活雑貨向けのレザー素材としてスタートし、技術を磨き上げた結果、品質基準が厳格な自動車の内装材にも採用されるようになったもの。今後は「航空機分野でのメンテナンス需要や新たな地域での販路拡大をにらみながら、製品開発、営業活動を進めていく」と同社の車輌資材BU(ビジネスユニット)長、金田浩一氏は語る。同氏に車輌資材BUの歩みから現在地、今後の展望について聞いた。

執行役員 車輌資材BU長 兼 車輌資材販売部長
金田 浩一 氏

生活雑貨から自動車用内装材へ、技術の進歩は地道な積み上げから

 アキレスが車輌資材内装材の製造・販売に参入したのは1969年、会社設立から22年後のことだ。創業1年後に製造・販売を立ち上げた歴史の長い塩化ビニール(PVC)製品と、1962年に製造・販売開始した同社独自のポリウレタン(PU)製合成皮革「カブロン」を、生活雑貨の枠を超え“車輌内装材”として提案したことにその歴史は始まる。
 「当時は足利第一工場で雑貨、かばん、シューズ向けに合成皮革やPVCレザーを製造していたという。それから足利第一工場の技術を以て中国・昆山(コンザン)に進出し、徐々に技術力をつけていき、品質基準の厳しい車輌内装材向けの販売も始まった」(アキレス執行役員・車輌資材ビジネスユニット長 兼 車輌資材販売部長金田浩一氏)

日本で唯一、合成皮革と同製法のPVCレザー

 同社で取り扱う車輌内装材は大きく分けて3種類。自動車のみならず、航空機や鉄道にも採用されるPU製合成皮革「カブロン」。本革やPU製合成皮革の代替として注目を集める塩化ビニール(PVC)キャスティングレザー「パートナー」。そして、自動車のほか、雑貨や家具などに使用される汎用品PVCカレンダーレザー「ビニスター」だ。
 注力製品としてはPVCキャスティングレザー「パートナー」の名が挙がる。同製品は、「日本国内で唯一、合成皮革と同じ製法で作られたPVCレザー」(同)だという。通常、国産PVCレザーの製造方法に用いられるのはカレンダー法(下図㊧)といって、ロールとロールの間にPVCなどの原材料や基布を挟み込ませ、圧力をかけて1枚のシート状にするもの。皮の意匠を出すための絞(しぼ)加工も、凹凸加工が施されたロールで、圧力をかけて行われる。

 対して、合成皮革の製造方法の1つでもあり、同社PVCレザー「パートナー」で用いられるのがキャスティング法(下図㊨)。同製法では、まずベースに繊細な絞加工が施された離型紙を置き、その上に半液状(ペースト状)のPVC樹脂、接着剤、基布を乗せて一枚のシートに仕上げていく。離型紙を剥がせば絞加工が仕上がるため、カレンダー法のようにロールの圧力で密度が高まり表皮が硬くなることがなく、しなやかで柔らかい風合いを保てることが特長だ。
 主に合成皮革で用いられるキャスティング法をPVCレザーに応用した経緯について「元々は海外との技術提携により、キャスティング法でPU製の合成皮革「カブロン」を製造していた。この知見を活かし、PUをPVCに置き換えて製造を試みたところ、国内で唯一、キャスティング法を用いたPVCレザーが誕生した」(同)と語る。

㊧カレンダー法 製造図 ㊨キャスティング法 製造図

各市場で求められる性能の 実現とコスト面の課題

 キャスティング法によるPVCレザー製造の確立は、従来のPVCレザーに見られた“ビニール感のある光沢(テカリ)”がない、上品でマット調の光沢と質感が、高級車にも馴染む意匠性の高さを実現した。その高級感は、日系の自動車メーカーのデザイナーにも認めてもらい、 「いち早く採用された」(同)という。

 しかしながら、採用面ではコストが課題となるケースもある。
「本革のような柔らかな風合いと意匠性の高さは、高付加価値品として認めてもらう一方、コスト面で導入が難しいとされることもある」(同)
 こうした中でも、同社は環境配慮型製品を開発し、自動車メーカーへの提案を進める。バイオマス素材を使用した軟質ポリウレタンフォームと、PVCレザーの2種を開発。これらを複合化させ、バイオマスプラスチック複合サステナブル素「Lagreen」(ラグリン)として提案。「まだコストが採用のネックになっているが、時代のニーズに沿ったラインアップを揃え、いつでも需要に応えられる体制を整えている」(同)。

㊤【PVCレザー「パートナー」】
㊦【合成皮革カブロン】

高付加価値品、低価格帯商品、それぞれの強みが生きる販路の拡大

アキレスのPVCレザー、合成皮革が採用されたシート


 現在、同社の車輌資材BUは、海外では北米、中国の2カ国に営業拠点を持ち、中国・昆山と佛山(フツザン)には製造拠点を置く。
 中国については、「昨年はEV戦略の影響を大きく受けた。補助金など政府の支援を受け、低価格帯商品を打ち出す中国現地自動車メーカーに市場を席捲されたことで、当社のメインの顧客である日系自動車メーカーの販売が低迷した。
それに伴い、当社も苦戦を強いられた1年だった。また、同国では価格は安価ながらも、内装のデザイン性が非常に高いEVが多い。脅威に感じている」(同)と語る。

 一方で、期待を寄せる地域がインドだ。同市場は、人口の増加と共に経済成長が著しく、業界を問わず注目度が高い。現在、同市場では低価格を強みとする現地自動車メーカーの勢いが強まるものの、「シェアを取り続けている日系自動車メーカーの存在や、今後の経済成長に伴う購入層の増加が見込めることから、期待感が高い市場。量を売るのではなく、意匠性で評価される製品を少しづつ(市場に)浸透させていきたい」(同)とし、高付加価値で足場を固める方針だ。

 また、新たな販売ルートとしてタイ、インドネシアなどのASEAN地域も視野に入れる。同地域では、現地メーカーとの価格勝負がカギとなるため、「まずは“武器”となる新製品の開発に取り組む。それを中国工場からASEAN地域に輸出したい。新製法が確立したところで、日本、アメリカなど他の地域にも展開できれば、既存の高付加価値品と、低コスト品の両輪を武器に戦うことができる」とし、同地域での販売戦略の主軸になりつつ、事業全体の底上げにつながる製品の開発・展開に取り組む構えだ。

高まる航空機需要とメンテナンス需要への期待

車輌資材BUの展望を語る金田氏


 アキレスは2027年を最終年度とする中期経営計画を策定・発表した。同計画では、2025年から2027年までの3年間を収益力の「再構築・強化期」と位置づける。車輌資材BUでは、拡販強化していく分野に航空機、鉄道などを挙げる。

 これについて金田氏は「特に航空機分野では、MRO(メンテナンスリペアオーバーホール:航空機のメンテナンス)需要に注目する。航空機は、今後さらなる需要の高まりが予想され、その流れで必ずやってくるMRO需要に当社も注目している。航空機内部のなかで一番負荷がかかり、傷むのがシートの部分だ。ここをMRO市場でしっかり獲得していきたい。また、格安航空(LCC)で使用される中古機のMRO需要にも注目したい。中古機は、稼働前にデザインを格安航空仕様に刷新する。航空需要の増加予測に伴い、LCC需要も増加が見込まれる。利用者が多い分、求められる安全性や品質基準は高くなるが、航空機分野に入り込むことで、自動車のみならずモビリティ全般に彩を与える製品として当社製品を打ち出していきたい」と展望を語った。

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