【特集】ゴム企業と宇宙
ブリヂストン、「国際宇宙探査ミッション」に挑む月面探査車用タイヤ
会員限定 ラバーインダストリー 2024-03-19
2019年4月、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)、トヨタ自動車(以下トヨタ)とともに国際宇宙探査ミッションへの挑戦を発表したブリヂストン。JAXAとトヨタが共同研究を進めている、燃料電池と自動運転技術を用いた月面を走行するモビリティ「有人与圧ローバ(愛称:Lunar Cruiser/ルナクルーザー)」のタイヤ開発を担い、ミッションを足元から支える。地球上とは環境が大きく異なる月面へ対応するため、どのようなタイヤを開発するのか。そのタイヤ開発を担当する次世代技術開発第1部弾性接地体開発課長の今誓志氏に話を聞いた。

ブリヂストン次世代技術開発第1部弾性接地体開発課長 今誓志氏
ブリヂストンが月面探査車用タイヤに取り組む意義
国際宇宙探査ミッションは、月の資源を探索することに始まり、月に住む、火星に行くための経由地にすることを目指している。
その中で当社としては、今回のミッションを極限のサステナビリティへの挑戦と捉えている。月面の環境は寒暖差が大きく(120℃~マイナス170℃)、空気がなく、宇宙線と呼ばれる高エネルギーの放射線が降り注いでいる。また、交換用のタイヤを多く持っていくことはできず、補充用エネルギーもない。そんな極限の環境で得た技術は、地球の課題解決にもきっと還元できると考えている。宇宙ビジネスももちろん重要な観点の一つだが、月面で得た技術を地球に持ち帰り、既存のタイヤに還元すること。それは、当社のミッションである「最高の品質で社会に貢献」にしっかりと合致できると考えている。
月面で走行するタイヤに求められる性能
月面探査車用タイヤのコンセプトモデルを製作するにあたっては、3つのことを考えた。
1つ目は、