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実大免震試験機で信頼性さらに向上

免震研究推進機構、免震動的性能認証制度7月1日からスタート

その他 New! 2024-07-01

 免震研究推進機構(和田章代表理事・東京工業大学名誉教授)は7月1日から、「免震動的性能認証制度」を開始する。6月24日に国土交通省が発表した。世界トップクラスの精度を誇る実大免震試験機(E-Isolation)を用いて、免震装置の性能を評価するもので、免震構造の信頼性がより高まることが期待される。

認証試験に使用する実大免震試験機(E-Isolation)


 免震構造は積層ゴム等の免震装置により、地震時の振動エネルギーを吸収し、建築物の上部構造に作用する地震力を抑えるとともに、ダンパーを併用して振動エネルギーを吸収する。建築物の被害を大幅に軽減するだけでなく、機能継続の確保にも有効で、今年1月の能登半島地震でも、同構造を採用した病院で機能継続が図られた事例が報告されている。

 ただ、免震装置の性能確認については、実際(実大)の免震装置を用いて動的に加振する装置がこれまで国内にはなく、縮小モデルの静的・動的試験と実大の静的試験から、実大の動的性能を推定する方法が主だった。そのため、免震のデータ改ざんが社会問題になるなど、試験方法の限界が指摘されていた。

 今回の認証制度はその課題解消に繋がる。認証試験で活用するE-Isolationは、2022年度の内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムで兵庫県三木市に整備され、免震研究推進機構により運用が行われている。実大の免震装置の動的性能を調べることが可能で、高精度の荷重測定が時々刻々にできる機能を備えている。

 認証制度は、動的性能認証と個別動的性能認証の2種類で運用する。前者はメーカーの主要な免震装置を対象に、3年に一度定期的に動的試験を行い、第3者機関(免震研究推進機構)による動的性能を認証する。建築物の規模を問わず、発注者、設計者、施工者が安心して製品を用いることができるようにする。後者は、個別プロジェクトの免震装置を抜き出し、発注者に向けて動的性能を認証する。大規模建築物向けで、プロジェクトにおける免震構造の信頼性をさらに高めていく。

 なお、建築物に使用する免震装置は建築基準法に基づく大臣認定の取得が必須となるが、動的認証の結果を大臣認定取得にあたっての性能評価に用いることも可能となる。

 6月26日に国交省で開かれた記者ブリーフィングで和田代表理事は、「免震装置の挙動は地震が来るまで設計者にも正確には分からなかった。今回の認証制度では、地震時同様の性能が保証され、皆に安心を与えることができる。この制度により、国交省とともにより良い社会を作っていきたい」と抱負を述べた。

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