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SGCNTとゴム等を複合化

日本ゼオン、シート系熱界面材料を開発

原材料 2016-11-11

説明する荒川経営特別技監

説明する荒川経営特別技監


 日本ゼオンと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は11月10日、NEDO分室(東京都千代田区)で記者会見を開き、従来の約2倍の性能を有する高性能なシート系熱界面材料(TIM)の開発に成功したと発表した。12月には量産化に向けたパイロットプラントを竣工する予定。まずサーバー、パワーデバイスなどの課題とされている、熱問題を解決する部材として実用化を目指す。

 今回開発したシート系TIMは、NEDO助成事業の中で開発した、スーパーグロース法を用いたカーボンナノチューブ(SGCNT、製品名:ZEONANO SG101)とゴムを複合化したもの。SGCNTと黒鉛、フッ素系ゴムを用い、同社の有するゴム分散技術、配合技術、加工技術を融合し実現した。「ゴムは、市場の要求である難燃性を確保するためにフッ素系にしたが、他のゴムでも可能」(荒川公平特別経営技監)だという。

 サーバーやパワーデバイス中の半導体チップは、情報処理能力が大きくなっていく中で熱対策が課題とされている。TIMは、半導体チップとヒートシンク等の放熱部材との間に挟みこむことで、界面の熱抵抗を下げるもの。従来はグリース系TIMが使用されているが、開発したTIMはシート系でありながらグリース系TIMに比べ優れた熱抵抗値、高い作業性、信頼性を実現した。グリース系TIMに比べ性能は約2倍。接着剤を用いることなく圧力で密着するため、グリース系TIMの課題である塗りにくさや液だれ等が起きず、半導体の組み立て工程の簡易化や生産性向上などにも繋がる。従来品と比べても「コストは十分に対抗できる」(同)という。
開発したSGCNT含有シート系TIM

開発したSGCNT含有シート系TIM


 すでに主要ユーザーに向けてサンプルを配布しており、2017年度下期から18年度初めにサーバー、パワーデバイス用途での実用化を見込んでいる。サーバーやパワーデバイス用途に使用される、TIMの中でも高性能な0.2℃/W以下に使用されるTIMは、20年に400億円近い市場規模が見込まれている。同社では「競合に対し優位性があれば、その市場の半分以上は取れるのではないか」(同)とみている。

 生産は、日本ゼオンの子会社であるゼオン化成の茨城工場(茨城県坂東市)で行う。すでにある建屋内に、数億円をかけパイロットプラントを建設する。パイロットプラントは12月に竣工し、17年4月末までに設備立ち上げ及び安定生産技術を確立する。海外へも展開することで、まず年産6万㎡を目指す。

 日本ゼオンは、15年11月から同社徳山工場(山口県周南市)でSGCNT量産プラントの稼働を開始している。同プラントの状況について、荒川特別経営技監は「SGCNT単体だけでの利用は難しい。現状は開発向けの供給となっており、今回のような出口製品が出て、初めて出荷に繋がる。今回はその第一歩になるわけだが、当社だけでなく様々な会社で出口製品の開発を行っている。これら開発が完成すると、SGCNTの出荷も伸びていく」と語った。

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