【トップインタビュー】モリテック社長 森 孝裕氏
モリテック、新入社員数十人採用し技術者として育成中
会員限定 インタビュー 2019-04-02
金型を使用することなく、複雑なゴム加工製品を多品種・少量生産できるモリテック。その加工技術力の高さは業界でも評判だ。昨年は新入社員を数十人採用し加工技術者として現在育成中。経営管理面も新システムを導入中で、人材育成とシステムの刷新で業績アップをはかる考えだ。森孝裕社長に業績の現況や海外展開の状況などについて聞いた。
■19年7月期業績状況
今期の前半は好調だったが、年明けから状況が変わり減速傾向にある。これまで数年間、右肩上がりで推移していたが、今年に入って市場環境が悪化している。地域別で見ると、大阪はこれまで同様好調に推移しているが、関東が厳しくなっている。当社は商社売りが100%なので、最終ユーザーの状況は掴みづらいが、これは半導体製造装置需要の減退などが影響しているようだ。米中貿易摩擦の影響により中国市場の需要が後退しているのだろう。
■米国子会社の状況
米国に販売会社を設立したのは2000年で、最初の10年間は赤字だったが、その後は黒字を確保している。ユーザーの要請で進出したわけではなく、取り引き先など何ひとつない状況の中、販社を設立し一から市場開拓に取り組んだ。
私の調べたところでは、海外には金型を使用しないでゴム製品を加工できるメーカーは存在しない。それならば金型不要で多品種・小ロット生産ができる当社の強みを生かせると思い進出した。
少量受注の場合、米国の部品メーカーであれば金型を作成し生産するため、単品の価格が高価になる上、納品にも時間がかかる。当社であれば、製造は日本だが、金型が不要なので短期間で製造でき価格も安く抑えることができる。米国までの運賃や輸送時間を考えても充分勝負ができるので、米国には工場を持たず、販売拠点だけを設けた。
米国では自動車製造ラインの設備部品やコンピューターの部品が中心だった。最近は新規用途開拓が進み、需要が拡大したため、既に確保していた施設に、来年中には生産設備を設置して稼働する予定だ。まずは米国市場でビジネスを確立して、チャンスがあれば欧州へも拡大し、先進国でビジネスを展開していきたいと思っている。
経営管理・基幹業務の新システム導入
■技術力で差別化
金型不要で複雑な形状の部品を多品種・小ロット生産できるのが当社の強みであり特色だ。そのため、一般工作機械を自社で改良し、複雑な加工ができるよう独自のゴム用機械を作って使用している。ゴム素材の加工で最も重要な刃物については、さまざまな形状のものを自社で作成している。こうした点が他社との大きな違いだろう。またコンピューター制御の最新鋭機器も導入している。
当社は熟練した技術を持つ加工技術者を多く抱えている。280人いる従業員のうち、技術者が200人を占めている。技術者の平均年齢は37歳。計画的に人材採用し、ベテランが若手に技術伝承することで、技術レベルの維持と充実した人員を確保している。
この1年間で新入社員を数十人採用した。現在、彼らを育成中で、3年後には一人前の技術者として力を発揮してくれるだろう。また働き方改革についても、待遇改善を方針として積極的に取り組んでいる。現在、経営管理および基幹業務についても新システムに移行中で5月初旬には完了する予定だ。人員が充実し、システムが刷新されることで、3年後には企業体質が相当強化されるだろう。
■BCP対策強化
大阪の本社工場と第2工場は大阪湾の近くに立地しているため、東南海地震などの巨大地震により津波が発生した場合のBCP対策として、名古屋と東京の生産拠点を拡充した。名古屋工場は2016年2月に拡張移転し、同年3月には東京第2工場を新設し、増産体制を整えた。大阪工場が津波で被災しても、名古屋工場と東京工場の生産キャパに余裕を持たせているため代替生産が可能だ。しかし仕事が忙しく、現状は東京も名古屋もキャパが一杯になっている。