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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要期待で250円突破

連載 2021-02-22

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=250円台後半まで値上がりする展開になった。中国が2月17日まで春節の連休を迎えていたが、15日の取引で突然に急伸地合が形成され、昨年12月4日以来の高値を更新した。

 上海ゴム先物相場は18日に取引が再開されたが、1トン=1万5,000元の節目を上抜き、こちらも昨年12月4日以来の高値を更新している。連休前は1万4,000元台中盤から後半で揉み合う展開になっていたが、連休中のJPXゴム相場の急伸を受けて、一気に値位置を切り上げた。

 世界的に資源価格が堅調に推移する中で、ゴム相場のみが玉整理に終始する方向性に乏しい展開が続いていた。しかし、ようやく他のコモディティ相場に対する出遅れ感や割安感を解消する形で、大きく値上がりしている。原油や非鉄金属相場は連日のように高値を更新する動きを見せており、ゴム相場もこうしたマクロ環境に沿う形で値上がりした。

 世界的に新型コロナウイルスの新規感染者数が減少に転じており、経済環境の正常化期待が強くなっている。米国では大型経済対策法を巡る審議も順調に進んでおり、経済が逆に過熱化するのではないかとの見方も浮上している。景気回復ペースは国や地域によって大きな違いがみられるが、中国や米国といった世界の主要自動車市場の改善傾向が目立つことが、ゴム相場を素直に押し上げる展開になっている。

 北米では寒波による停電で自動車生産の停止が報告されており、日本でも福島県沖の大地震で部品のサプライチェーンを巡る混乱で自動車減産の動きが報告されている。ただ、これらはいずれも一時的な需要下振れリスクと評価されており、材料視されていない。

 供給サイドには、特に目立った混乱はみられない。タイ中央ゴム市場の集荷量も安定している。インドネシアやマレーシアでは降雨による農作業の停滞報告も続いているが、改めて供給リスクのプレミアムを加算するような動きは確認できない。今後は減産期に向かうことに注意が必要だが、季節要因に基づく上昇圧力はみられない。タイのRSS現物相場は前週の1キロ=59バーツ台から18日時点では64バーツ台まで上昇しているが、これはもっぱらJPXゴム相場の急伸と連動した動きである。

 為替が円安気味に推移したこともポジティブ材料視されている。5か月ぶりの円安水準になっている。ただ、JPXゴム先物は当先のサヤが順サヤ(期近安・期先高)に移行しており、やや投機色も目立ち始めている。需要拡大期待を更に織り込む形で一段高を打診するか否かが焦点になる。

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