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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、供給不安で13年ぶりの高値

連載 2024-09-02

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=370円台中盤まで値上がりし、2011年9月以来となる約13年ぶりの高値を更新した。産地供給不安の織り込みが加速し、一気に上値を切り上げる展開になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万6,000元台後半まで値上がりする展開になった。中国経済の減速懸念は根強いが、需要不安よりも供給不安の織り込みが優先された。産地相場の値上がりよりも、上海相場の値上がりペースが速く、投機色の強さも否めない。ただし、上海ゴム相場が連日の年初来高値更新となる中、JPXゴム相場も素直に連れ高する展開になっている。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、8月29日時点で前週比8.6%高の1キロ=87.51バーツと急伸している。23日に80バーツ台に乗せしてから、一気に値位置を切り上げている。USSも28日に80バーツ台に乗せている。

 主産地タイでは8月に入ってから豪雨傾向が強くなっている。日本にも複数の大型台風が襲来しているが、その台風の発生源である東南アジアでは、モンスーンの活動が活発化している。海水温度の高さから降水量が増えており、タイ気象庁は大部分の地域に対して注意報を出している。豪雨や強風に加えて、洪水や鉄砲水、地すべりなどの災害も発生しやすく、実際に死者は公式に確認されただけでも20人を超えている。タイ副首相は、経済的には2011年の豪雨災害ほどには深刻ではないとの見通しを示しているが、今後の展開には高いレベルの不透明感を抱えた状態にある。

 このまま豪雨が続き、そのまま異常気象「ラニーニャ現象」の発生にまで発展していくと、供給不安の織り込みが9月以降も継続される可能性が高まる。一方、海水温度の低下が促されると供給リスクの緩和・解消から急反落する可能性が高まる。もっぱら供給リスクの評価が中心になる天候相場になっているため、上下双方にブレ幅が大きくなりやすいが、8月末にかけては供給不安の織り込みが強化されている。

 一方で、中国の在庫にタイト感が強くなっているわけではない。上海取引所の認証在庫は、8月23日時点で12週連続の増加になっている。産地天候不順で消費国の需給がひっ迫化しているとのロジックは、少なくとも上海ゴム市場については該当していない。当限に対してプレミアムを加算していくような動きも鈍く、供給不安を手掛かりとした上昇相場であることは確かだが、同時に投機色の強さも目立つ値動きになっている。

 JPXゴム先物相場のサヤはフラット状態から改めて逆サヤに移行した。国内の在庫は減少傾向を維持している。

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