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白耳義通信 第94回

「2024・夏」

連載 2024-08-21

鍵盤楽器奏者 末次 克史
 日本も猛暑のようですが、こちら欧州も暑い日が続いています。ただ、日本と違って湿度が低いので、家の中にいる限り、さほど暑さも感じず快適な点は助かります。しかし外に出ると、纏わりつくような暑さより、その分一段と厳しい太陽の日差しが直に感じられます。先日も油断していて、熱中症になってしまいました。

 さて、賛否両論を巻き起こした2024パリオリンピックですが、音楽家として気になったのはピアノの扱い。開会式は雨のため、ピアノの蓋の上には大粒の雨の様子が画面越しにも分かる有り様。またピアノが燃やされる様子も目に飛び込んできました。閉会式では、ピアノが垂直に宙吊りになり、ピアニストは仰向けになりながら弾かされたのにはビックリ仰天。

 何が何だか理解できないのが芸術の定義の一つだとすると、これはその意味において成功したと言えるのでしょう。さすが芸術の都・パリという他ありません。ただピアノを燃やすというアートは、ジャズピアニストの山下洋輔氏が既に行っており、二番煎じの感は否めません。それから雨の中でピアノを弾いたり、ピアノを宙吊りにしたりしたということは弾きパクなのでしょうから、そのような状況に於いて熱演を求められるピアニストには、ただただ同情するばかりです。

 閉会式の様子は、フランスのテレビ中継を見ていたのですが、パフォーマンスの様子をただテレビで垂れ流すだけで、誰がパフォーマンスをしているのかアナウンスはなし、またテロップでも表示されず、ベルギー人歌手アンジェル Angèle を知らなかったわたしは、後のニュースでベルギー人だと知る始末。過去の五輪の閉会式で一番印象的だったリオオリンピック閉会式の引き継ぎ式を見返して口直しならぬ目直しを以て気持ちを収めました。

 因みに、ベルギーは10個のメダルを獲得。内訳は金メダル3、銀メダル1、銅メダル6で、バスケット女子など多くの競技で4位という結果となり、後一歩の差がなんと遠いことなのかと、非常に重たく感じられたシーンが象徴的でした。

フラワーカーペット2024(筆者撮影)


 例年日本のお盆の頃の週末にかけて開かれるのが、ブリュッセルのフラワーカーペットです。今年のテーマは「リゾーム」Rhizome。「植物の根のように、線が交差して重なり合う様が、ブリュッセルの多様性と活力を反映する密集した有機的なネットワークを生み出している」とは、今年のフラワーカーペットをデザインしたベルギーのリエージュ出身のストリート・アーティスト、オセアン・コルニーユ Océane Cornille の弁です。

 これまでフラワーカーペットにはベゴニアが使われてきましたが、丈夫さと装飾性に勝るダリアが主に使われています。不思議なことに、フラワーカーペットが開かれる4日間、これまであまり雨が降った印象がなく、どちらかというと晴天続きのせいで、最終日には所々花が枯れていたイメージがあったので、1971年から始まったこの催しの最初のデザインアラベスクパターンを取り入れた今年は、原点回帰をしつつ、新しいものを取り入れるという不易流行の精神が取り入れられた年となりました。

 最後にオリンピックの話に戻りますが、2028ロス五輪の開会式で、1984ロス五輪で演奏されたジョン・ウィリアムズによる「オリンピック・ファンファーレ」が再度演奏されるのかどうか今から注目しています。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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