【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、株価・円と連動の乱高下
連載 2024-08-19
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=309.90円まで下落して5月14日以来の安値を更新した後、320円台前半まで切り返す展開になった。供給不安と需要不安の交錯で明確な方向性を打ち出せていないが、週前半は世界的な株価急落や円相場の急伸を受けて、ゴム相場も上値の重い展開。しかし、株安・円高一服後は安値修正の動きが強まり、7月22日以来の高値を更新する展開になった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万5,000元台中盤から後半で底固く推移した。中国経済の減速懸念は根強く、非鉄金属や鉄鉱石、石炭相場などは上値の重い展開になっている。しかし、ゴム相場に関しては産地相場が堅調に推移している影響もあり、他コモディティ相場に逆行高になっている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、8月8日時点で前週比5.1%高の1キロ=78.68バーツ。8月入りした後も上昇地合が続いている。
タイでは豪雨傾向が続いており、ゴム生産への影響が警戒されている。砂糖市場などでは、干ばつが回避できると、逆に農産物生産にポジティブと評価されている。しかし、7月以降のゴム市場では豪雨が供給リスクとして評価され続けている。タイ気象庁の予報だと、8月も雨がちな天候が続く可能性が高い。マーケットの一部では、異常気象ラニーニャ現象が発生する初期兆候ではないかとの警戒感も広がりつつある。
いずれにしても産地相場は7月10日の64.09バーツをボトムに約1カ月にわたって上昇が続いており、国際ゴム相場を下支えし続けている。
一方、7月30~31日の日本銀行金融政策決定会合後は、株価急落と円急伸が同時進行したことが、ゴム相場の上値も圧迫した。日本銀行がマーケットの想定以上に利上げに対して積極姿勢を示したことがサプライズと評価されている。低金利の円で資金を調達して、高金利国の金融資産等で運用する円キャリートレードの巻き戻しが発生した模様であり、8月5日の日経平均株価の下げ幅は過去最大となった。世界的な株価急落と比較すると、コモディティ市場は事前に調整が進んでいたこともあり、影響は限定された。しかし、それでもゴム相場も一定の売り圧力に晒される展開になった。また、為替相場は1ドル150円台前半から一時141.66円まで急激な円高・ドル高となり、為替要因でも円建てゴム相場は上値を圧迫された。
しかし、6日には逆に日経平均株価が過去最大の上昇幅を記録し、146円台まで一気に円安・ドル高に振れる中、週中盤から後半にかけてゴム相場も安値から大きく切り返した。金融市場の動向に強く左右される展開になった。
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