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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場、世界的な株高でも伸び悩む

連載 2017-05-11

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200-220円のレンジで揉み合う展開になった。

 4月23日のフランス大統領選を経て先行き不透明感の縮小から投資家のリスク選好性が強まる中、株高や円安などと連動してゴム相場も地合を引き締めた。ただ、改めて本格的に上値を試すような動きまではみられず、26日の221.00円で上げ一服となっている。上海ゴム相場も1トン=1万5,000元の節目水準に抵抗を受けており、下げ一服があるものの、上値を攻めきれない中途半端な値動きになっている。

 急落が続いていた上海ゴム相場は、下げ一服となっている。ただ、世界的なリスクオンの地合でも中国市場では株価が下落しコモディティ価格も伸び悩むなど、投資家の資産市場に対する関心は盛り上がりを欠いている。流動性の欠如から逆に資金引き揚げの動きが目立ち、グローバルな株高圧力に連動して底入れを確認することに失敗している。唯一、投資人気を集めているのが仮想通貨ビットコインになっている。

 当然、円安は東京の円建てゴム相場に対してポジティブ材料だが、現在の産地オファー相場の水準では、1円の円安(ドル高)でも1キロ=4円程度の値上がり圧力に留まることになり、大きなインパクトまでは確認できない。

 主産地タイではソンクラン(水掛け祭り)が終わり、暦の上では乾季から雨季への移行が進んでいる。しかし、中央ゴム市場における未燻製シート(USS)の集荷量は日量10トンを下回る状態が続いており、概ね季節サイクルに沿った減産圧力が確認されている。消費地相場と比較して、やや産地相場の底固さが目立つことには注意が必要だが、産地主導で安値是正を進めるような動きまでは確認できない。

 今年は乾季の降水量が例年と比較して安定しており、パーム油やコメ、小麦などの生産環境が良好と報告されている。特にパーム油は値下がり傾向が強くなっており、東南アジア地区の農産物生産環境の良好さを明確に物語っている。

 タイ、インドネシア、マレーシアの三カ国はゴム価格の安定化について協議を行ったが、現状では特に目立った危機感は示されなかった。タイ政府は天然ゴム産業に対するローン提供による需要喚起策を決定しているが、即効性が期待できるものではなく、特に材料視されていない。

 引き続き注目されるのは、天然ゴムの需給環境よりも上海ゴム相場の動向になる。日本のゴールデン・ウィーク中に投機的な売買が改めて活発化し、連休明け後に値が飛ぶリスクには注意が必要だ。

 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努)

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