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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム、上海相場に一喜一憂の展開

連載 2017-04-04



                        マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、3月27日の1kg=235.30円まで急落した後、240円水準まで切り返す不安定な値動きになっている。

 上海ゴム相場の下値切り下げ傾向が続く中、東京ゴムも連れ安し、昨年12月5日以来の安値を更新している。直近高値366.70円(1月31日)からは35.8%の急落となる。ただ、その後は上海ゴムが下げ渋ったことでショートカバー(買い戻し)が下値を支え、1週間を通じてみると5円程度の値下がり幅に留まっている。

 引き続き投機色が強い上海ゴム相場の値動きに一喜一憂する展開になっているが、その上海ゴム相場の底打ち感が乏しいことが、東京ゴム相場の上値も圧迫している。

 米国でトランプ政権の政策運営に不信感が強まるも、中国通貨人民元は再び軟化傾向を強めている。しかし、人民元安連動で人民元建てゴム相場を積極的に押し上げていくような動きは確認できず、瞬間的な急騰・急落が繰り返されている。

 鉄鉱石や石炭相場なども下値切り下げ後に小反発する展開になっている一方、上海株式相場は年初来高値更新後に突如急落しており、中国系投資家が短期間に各市場間で資金シフトを繰り返していることが、ゴム相場を不安定化させていることが窺える。

 ウインタリング(落葉期)もピークに向かう中、産地集荷量は抑制されている。ただ、産地現物相場主導で安値是正を進めるような動きは確認できていない。

 むしろ、今季は例年と比較して乾季の降水量が多めになっているため、乾季のダメージは限定されるとの楽観的な見方が、季節要因に伴う国際ゴム相場の上昇圧力を阻止している。パーム油やコーヒーなど、天然ゴムと生産地が重複する他の農産物相場も総じて上値の重い展開が続いている。

 全国営業生ゴム在庫(3月10日時点)は前旬比399トン減の4,202トンと減少傾向が続いている。前年同期の1万723トンの4割程度の水準に留まっているが、こうした在庫環境は余り材料視されていない。東京市場では大幅な逆サヤ(期近高・期先安)が形成されているが、昨年のように期近主導で買い上げる動きも確認できない。

 足の速い投機資金が上海ゴム市場に対する流入・流出を繰り返しているのみだが、東京ゴム相場は250円の節目を完全に割り込んでいる以上、更に投げ売りが膨らむ可能性がある。ただ、あくまでも投機主導の相場展開になっているだけに、原油高や人民元安などをきっかけに、瞬時に地合が好転するシナリオも想定しておきたい。

 【プロフィール】
 小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosugne_tsutomu

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