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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、需要不安の蒸し返しで反落

連載 2022-10-17

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=239.80円まで上昇して7月29日以来の高値を更新した後、230円水準まで軟化する不安定な地合になった。原油高や産地相場高を背景に戻り高値を更新したが、その後は需要不安を背景に上海ゴム相場が急落し、つれてJPXゴム相場も戻りを売られている。為替は円安傾向を維持しているが、上値を抑えられた。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半まで下落。国慶節の連休明け直後は1万3,000元台前半で、概ね連休前の値位置と同水準での取引になったが、10月11日以降は需要不安の織り込みが優勢になり、9月14日以来の安値を更新している。

 9月下旬は中国通貨人民元相場の急落が人民元建てゴム相場を押し上げていた。しかし、国慶節の連休明け後はもっぱら需要不安を織り込む動きが優勢になっている。中国人民日報は10月12日、ゼロコロナ政策が新型コロナウイルスによる多くの犠牲者を回避できる唯一のやり方との論評を掲載した。共産党大会を控えて、改めてゼロコロナ政策を続ける方針を確認した格好になる。一方、国慶節の連休明け後は感染被害の広がりが報告されており、上海市などで改めて大規模な行動規制が展開されるのではないかとの警戒感が、上海ゴム相場の上値を圧迫している。

 また、国際通貨基金(IMF)が2023年の世界経済成長率予想を7月時点の2.9%から2.7%まで下方修正したこともネガティブ。世界経済見通しの悪化が報告されており、2020年のパンデミックによる異例の景気減速を除くと、2009年以来の低成長状態が予想されている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月12日時点でUSSが前週比1.3%安の1キロ=48.39バーツ、RSSが同3.0%安の50.80バーツ。週明け直後は急伸していたが、その後の上海ゴム相場の急落を受けて、12日の取引で突然急落した。東南アジアでは豪雨や洪水被害の報告が続いているが、タイの集荷環境に大きな問題は確認できない。コメやパーム油生産への影響が報告されているが、ゴム生産に関しては供給障害より供給不安としての消化が中心になっている。

 JPX天然ゴム先物相場は、明確な順サヤ(期近安・期先高)を形成しており、期近限月に対するリスクプレミアムの加算を見送っている。産地相場の値位置は大きく切り上がったが、消費地相場に対する影響は限定されている。

 原油相場は10月5日に石油輸出国機構(OPEC)プラスが大規模減産を決定したことで急伸していたが、その後は需要不安に上値を圧迫される展開になった。原油相場の上昇圧力が一服したこともネガティブ。

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