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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、消費地通貨安で堅調地合

連載 2022-10-03

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台後半まで上昇する展開になった。急激なドル高の影響でゴム消費国の通貨は急落し、円安や人民元安環境を背景に強含みの展開になった。9月27日に付けた高値は235.30円に達し、8月8日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,250元まで上昇している。1万3,000元の節目水準で売買が交錯する展開が続いていたが、急激なドル高環境で人民元相場が14年8カ月ぶりの安値を更新したことが、人民元建てゴム相場を押し上げた。また、10月1日から国慶節の大型連休が始まることで、持ち高調整の動きも最近の軟調地合に対する修正高を促した模様だ。

 9月20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、インフレ対応のために3会合連続で0.75%の大幅利上げが決まり、さらに来年に向けて利上げを継続していく方針が示された。このため、米長期金利の急伸からドルインデックスが2002年5月以来の高値まで急伸し、ドル建てコモディティ価格は軒並み急落した。一方、円や人民元相場は逆に急激な値下がりになり、円安がJPXゴム相場、人民元安が上海ゴム相場を押し上げた。

 各国が急激な利上げを進める中、世界経済の先行き不透明感は一段と強くなっている。金利水準が大きく切り上がっていることで、世界の株式やコモディディティ相場は下落している。しかし、日中のゴム市場では需要不安やリスク投資の地合悪化よりも通貨安環境が重視されている。

 モンスーンシーズンで日本を含む世界各地で洪水被害の報告も目立つが、ゴム生産地では大きな混乱は報告されていない。異常気象「ラニーニャ現象」が発生していることで、例年と比較すると天候リスクは高めの状態にあるが、タイ中央ゴム市場の集荷量をみても、目立った増減はみられず安定している。現物相場は、9月29日時点でUSSが前週比1.6%高の1キロ=46.36バーツ、RSSが同1.4%高の49.19バーツ。消費地相場の堅調地合を受けてやや底固く推移したが、総じて最近のボックス圏を踏襲する展開に留まっている。こうした点からも、最近のJPXゴムや上海ゴム相場の堅調地合に関しては、需給ではなく通貨環境や持高調整の影響が大きいことがうかがえる。

 JPXゴム先物相場のサヤも、おおむねフラット状態から小幅順サヤ(期近安・期先高)状態となっており、相場が底固く推移している一方で、サヤ環境は目立った変動を見せていない。

 上海ゴム市場は連休に入るが、通貨安と需要不安のバランスが問われる地合が続く。

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