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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、手掛かり難も安値修正

連載 2021-08-02

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=210円台中盤まで小幅切り返す展開になった。新型コロナウイルスの感染被害は世界的に広がりを見せているが、投資家のリスク選好性が維持される中、押し目買いが下値を支えた。本格的に上値を買い進むような動きまでは見られないが、7月15日の205.30円をボトムに自立反発的な動きが優勢になっている。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万3,000元台前半でやや底固く推移している。7月20日の1万2,880元をボトムに若干の安値修正が促されている。中国株は中国政府が企業統制を強めていることが嫌気され、パニック的な急落地合を形成している。しかし、上海ゴム相場に対する影響はみられなかった。

 世界的に新型コロナの新規感染者数が増加し続けている。日本の1日当たりの新規感染者は7月29日に初めて1万人を超えたが、欧米でも感染被害が深刻化し続けている。米国では、ワクチン接種済の人に対してもマスク着用を推奨する新指針が設定され、連邦政府と地方政府はワクチン接種率引き上げのための取り組みを強化している。現段階では、本格的な行動規制の導入には至っていないが、このまま感染被害が拡大し続けると、行動制限が再導入され、実体経済に対しても大きな影響が生じる可能性がある。また、中国でも南京空港でクラスターの発生が報告されており、感染被害の拡大を封じ込めることが可能か、先行き不透明感が強くなっている。

 一方で、株価や原油相場は落ち着きを取り戻しており、投資家のリスク選好性は維持されている。このため、先行き不透明感が上値を圧迫する一方、本格的な値崩れは回避されている。

 自動車部門では、半導体不足に加えて部品工場におけるクラスター発生などを受けて、各国で工場の稼働に問題が報告されている。新車用タイヤ需要は中国市場を筆頭に鈍化が目立つ状況になっている。ただ、買い換え用タイヤ需要に関しては底固さが目立つこともあり、本格的な需要不安を織り込むような動きは見られない。

 産地のパンデミックが供給障害に発展するリスクが警戒されるも、現段階では供給リスクの織り込みは見られない。JPXゴム相場も当先のサヤは順サヤ(期近安・期先高)であり、期近限月に対するプレミアム加算は見送られている。タイ中央ゴム市場の集荷量も安定しているが、7月29日時点の現物相場はUSSが前週比2.9%高の1キロ=49.78バーツ、RSSが同3.9%高の53.39バーツとなっている。消費地相場主導の価格形成が続いている。

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