【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国の資源価格抑制を警戒
連載 2021-05-24
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=240円台で揉み合う展開になった。中国政府がコモディティ価格高騰に対して強い懸念を表明しているため、政策介入に対する警戒感が上値を圧迫している。ただ、大きく値を崩すまでの勢いはなく、薄商いの中で決定打を欠いている。
上海ゴム先物相場も1トン=1万3,000元台前半をコアに揉み合う展開になった。瞬間的に1万3,000元台を割り込む場面も見られるが、決定打を欠いている。
上海ゴム相場の動向が注目されているが、上値が重いながらも下げ渋る中途半端な相場展開になっている。5月入りしてからは中国政府が鉄鉱石や鉄鋼、石炭、銅などの産業用コモディティ価格の高騰に強い警戒感を示していることが、上海ゴム相場の上値を圧迫している。特に豪中関係の悪化もあって大連鉄鉱石相場が過去最高値を更新する中、コモディティ価格の高騰が経済に与える影響を強く警戒している模様だ。
当初は大連や上海取引所が証拠金引き上げなど投機鎮静化策を導入したが、十分な効果を得られなかった。そこで中国国務院は国内外のコモディティ価格高騰を「監視している」との声明を出したが、5月19日にはさらに踏み込んで、「不合理」な価格上昇を抑制するために、需要と供給の両面で管理を強化する方針を示した。鉄鋼の生産抑制、輸出を抑制することで鉄鉱石価格の鎮静化を促そうとしており、特に鉄鉱石相場が高値から大きく下押しされていることが、上海ゴム相場の上値も圧迫している。
コモディティ価格の高騰は急激な需要拡大に裏付けられているだけに、政策介入による価格鎮静化が可能なのかは疑問の声も強い。そもそも、ゴム相場に関しては鉄鉱石のような異常な高値を付けているわけではない。また、中国政府も具体的な政策を発表していない。このため、極めて投機色の強い不安定な値動きが繰り返されており、JPXゴム市場では積極的な売買が見送られがちになっている。
産地では、減産期明けのタイミングを迎えて集荷量がやや上振れ傾向にあるが、供給サイドの動向はあまり材料視されていない。タイ中央ゴム市場の現物相場は、5月20日時点でUSSが前週比0.7%高の1キロ=64.35バーツ、RSSが同0.7%高の68.14バーツ。消費地相場と同様に目立った値動きは確認できていない。
東南アジアでも新型コロナウイルスの感染被害が拡大していることで、労働力不足などサプライチェーンの動向に注意が求められるが、現時点では潜在的なリスクに留まっている。
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