とある市場の天然ゴム先物 12
【SDGs】天然ゴム先物市場とサステイナビリティの関係
連載 2021-04-06
実施することの難しさ、業界全体の取り組み
ところで2030アジェンダ自身が「最高に野心的(supremely ambitious)」と述べているように、いざ個々の状況に落とし込もうとするとSDGsのビジョンを達成するのはそう簡単なことではないことに気づきます。
天然ゴムの場合ですと、生産の中心は数百万世帯とも言われる新興国の小規模農家であり、また各国によって異なる複雑なサプライチェーンを持っています。
こうした環境下において「生産過程で森林破壊がされていないか」、「生産された天然ゴムが農家の人権を侵害していないか」といったことを逐一チェックするには膨大な調査が必要であり、また生産者の追跡を可能とする仕組み(トレーサビリティの確保)を新たに構築することが求められます。
こうした全てのコストを企業が個別に負担するのは経済的に現実的ではなく、また「何をすることでトレーサビリティが確保されたと言えるのか」といった基準が定まっていなければ各社で対応がバラバラになり、混乱が生じるばかりで結果としてSDGsを達成することはできなくなってしまうでしょう。
このような背景から、天然ゴム業界におけるSDGsへの取り組みは、各社の取り組みに加えて業界横断的なアプローチが採られています。
そのうちの1つが、IRSG(国際ゴム研究会)が提唱する「天然ゴムを持続可能な資源とするためのイニシアティブ(SNR-i)」です。SNR-iはIRSGの枠組みの下で、メンバーの自主的で協調的なプロジェクトとして2014年に設立されました。
SNR-iではサステイナブル天然ゴム(SNR)の基準として、①生産性向上支援、②天然ゴムの品質向上、③森林の持続性支援、④水の管理、⑤人権および労働基本権への配慮、の5つの指針が設定され、賛同企業がこの指針や指標に基づいて自主的な活動と継続的な改善を進めることが期待されています。
また2018年には大手タイヤメーカー主導で、天然ゴムの持続可能なサプライチェーンの国際的プラットフォームとしてGPSNR (Global Platform for Sustainable Natural Rubber) が設立されました。
GPSNRには現在、タイヤメーカー以外にも天然ゴムの生産者や製造会社、商社、ゴム製品企業、自動車メーカー、民間非営利組織、小規模農家といった幅広いステークホルダーが参加しています。
GPSNR 12原則
出所: GPSNR
GPSNRによると、天然ゴムは小規模農家が多いためにコーヒー農園のような認証制度がうまく機能しないことから、サプライチェーンにおける透明性や貢献度合いをスコアリングするといったアプローチを目指しているそうです。
その実現にはサステイナブル天然ゴムの取引プラットフォームが必須であり、取引価格にサステイナビリティのプレミアムが適切に反映され、かつスコアリングもシステム上で管理できるようにするなど、まだまだ越えなければならない課題が多くあるとのことでした。
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