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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、米景気刺激策期待で小幅高

連載 2021-02-15

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=240円台前半まで小幅上昇する展開になった。米追加経済対策に対する期待感から景気回復ペース加速の思惑が強まる中、原油や非鉄金属相場などと同様にゴム相場も底固く推移した。最近のボックス圏内での値動きになるが、約1カ月ぶりの高値を更新している。

 上海ゴム先物相場も1トン=1万4,000元台中盤から後半でやや底固く推移している。春節の連休を控えていたが、中国では新型コロナウイルスの感染が沈静化していることもあり、春節後のパンデミック第2波のリスク軽減が素直に好感されている。

 世界経済の見通しが改善していることが、ゴム相場も支援している。日本では首都圏を中心に緊急事態宣言が続いているが、中国や米国では感染に一服感が浮上しており、経済活動が活発化するとの期待感が強くなっている。

 特に米国では、バイデン大統領が1兆9,000億ドルの大型経済対策の実現に強い意欲を示していることが好感されている。5日には上下両院が優先審議とする決議を採択し、早期の法案成立に向けて協議を本格化させている。過度に景気を刺激することでインフレを引き起こすのではないかとの懸念の声も聞かれるが、労働市場の回復が遅れていることもあり、財政政策で需要を刺激することになる。

 国内では自動車・タイヤメーカーの決算発表が本格化しているが、通期業績見通しを上方修正する動きが目立つ。タイヤに関しては、トラックやバスなどの大型車用や、北米のSUV向け販売に関してポジティブな報告が目立つ状況にある。ゴム需要環境の正常化評価が強まる状況はポジティブだが、相場に対する影響は限定的だった。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月10日時点でUSSが前週比1.0%高の1キロ=55.41バーツ、RSSが同1.0%高の59.83バーツとなっている。RSSは一時60バーツ台を回復しているが、もっぱら消費地相場と連動した値動きになっている。ウインタリング(落葉期)を迎えて減産期が近づくが、足元の集荷量は目立った増減がなく安定している。インドネシアやマレーシアでは雨がちの天候による農作業への影響、アジアの一部地域ではコンテナ不足なども指摘されている。ただ、JPXゴム先物相場のサヤはフラット化するなど、特に供給サイドのリスクプレミアムを加算するような動きは確認できていない。

 全般的に底固さが目立ったが、上値を攻めきることはできず、最近のボックス相場内での堅調地合に留まった状態で、中国の春節を迎えている。

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