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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(25)

ゴム産業はもうコロナ後を見据えている?

連載 2020-11-05

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
 2020年11月現在、まだ新型コロナウイルスは収まっていません。欧州には第二波がやってきて、フランス、スペイン、イギリス(イングランド)等ではロックダウンが再発令されました。自動車生産台数、タイヤ生産量も世界ではかなり戻ってきましたが、今後の経済が心配です。

 世界のゴム産業は新型コロナウイルスの影響で低迷しているのか?一般的にはまだ悪影響がでていますが、実はコロナ後を見据えて動き出しているように感じます。

 まず中国、すでに自動車生産量は昨年同月比でプラスになっています。9月の中国新車生産は前年同月比14.1%増の252.4万台です。トヨタとホンダは9月に国内外で生産した車の台数が、過去最高になりました。中国とアメリカで需要が回復したからです。中国のタイヤ工場の稼働率は、2月こそ10%台まで落ちましたが、3月は50%、4月60%となり、8月には前年とほぼ同じ稼働率になりました。10月になりさらに増産を加速しています。天然ゴム、カーボンブラック、合成ゴムのタイヤ原料も売れに売れています。

 天然ゴム価格もすでにポストコロナを見据えた動きになっています。2020年10月は天然ゴム価格が高騰しました。11月になり、高騰は収まりつつありますが、価格が上がった要因の一つは10月の中国の天然ゴムの買い注文が急増したからです。もちろん東南アジアの長雨、ゴム手袋需要の高まり、中国のファンドの金の流入も要因ですが、市場関係者は9月末以降の中国での天然ゴム買い注文量に驚いています。タイヤ生産が前年よりプラスになり、2020年1月-12月の通年では、中国ではゴム材料消費量は2019年とあまり変わらない数字になるかもしれません。

 日本でも10月後半から、ゴム材料の動きが活発になっています。加藤事務所はゴム材料商社でもありますが、10月のゴム材料の動きは活発です。いままでの減産を取り戻すような動きで、材料によっては、納期遅れ、在庫切れを起こすほどです。

 いままでずっとブレーキを踏んで、生産量を減らし、原料在庫、製品在庫を減らしていたところに、需要(期近の自動車生産量と今後3か月の生産予定台数)の増加が急にはっきりしてきたので、慌てて生産量を回復される体制にして、一斉に材料を注文したからでしょう。

 もっとも土木、建設機械関係のゴム製品の回復はまだ遅れているようです。

 下のグラフは、日本ゴム工業会発表ゴム製品出荷実績からのデータです。8月以降のデータはまだ発表されていませんが、8,9月とさらに出荷量が回復しているようです。

 台湾のゴム機械メーカーのニーダーマシナリー社では、コロナの影響でゴム機械の注文が激減していましたが、その暇な間に会社の業務を見直し、より強靭な会社にしようとしています。今回のコロナは、ある意味チャンスだった。改善活動ができる期間であった。景気が戻れば、これを機により前に進むことができると、同社の陳社長は言っています。(この話は加藤事務所のラバーステーション、RUBBER BIZ NOW「世界へ直撃インタビュー!台湾・ニーダーマシナリー社代表に聞く」をご覧ください)

 世界のゴム産業は確かに新型コロナウイルスで大きく傷つきましたが、すでにコロナ後を見据えて動き始めているように感じます。皆さんはどうでしょうか?

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