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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」㉒

いま海外のタイヤ、ゴム工場は稼働しているか?

連載 2020-05-07

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 日本のゴム工場、タイヤ工場は、2020年4月はほとんど通常通り稼働していました。

 中には生産停止している工場もありますが、それは新型コロナウイルスの影響で、ゴム製品の売り上げが下がり、需要が減り、製品在庫が増えたのでの、数日間生産を止めて、生産調整をしているからです。

 さて、海外のゴム工場はどうでしょうか?

 中国のゴム産業は、2月から大減速で、4月から徐々に回復しています。これにより天然ゴム、合成ゴム(ブタジエン)のアジア相場価格に影響がでています。合成ゴムの原料であるブタジエンのアジア価格は、原油価格下落に影響もあり、1月にはトン当たり$950だったものが、今では$350です。天然ゴム価格も25%安。


 ヨーロッパのゴム工場、タイヤ工場は3月下旬から次々に停止していきました。特にフランスとイタリアは、政府の命令で、基本的には工場が停止しました。もっともミラノにある当社の取引先工場は、基本は営業、技術、管理部門はリモートワークを中心に、生産部門も4月初めまで操業していました。イタリア人の楽観的な考え方だからでしょうか。しかし最後にこの会社も工場一時閉鎖になりました。これは新型コロナウイルスの感染防止のため、都市が封鎖されたからです。ヨーロッパの都市封鎖は法律で厳しく規制されてきましたから、特別許可がなければ工場操業が許されません。社員も出社できませんでした。但し医療関係等の生産である場合、停止するとかえって危険になる場合は操業が認められました。そこで、合成ゴム工場や石油化学工場は、稼働率は下がりましたが操業は続けられました。自動車用ゴム部品工場、タイヤ工場は停止しました。フランス、イタリアだけでなく、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ロシアの欧米系のタイヤ工場も3週間ほど停止しました。また自動車生産工場も停止です。4月末になると、これらの工場が続々と操業開始しました。コロナウイルスの拡大のピークが過ぎたということでしょう。

 米国のゴム、タイヤ工場は4月になると、ヨーロッパの後を追い、大手タイヤメーカー、自動車ゴム部品工場、自動車工場は停止していきました。3月の政府の国家非常事態宣言を受けてです。全米タイヤ製造者協会の4月24日の発表によると、2020年のタイヤ出荷量は2019年比で新車用乗用車タイヤが24%減、交換用乗用車タイヤが17%減、ライトトラックが17%減、その他トラックタイヤが7%減になると予想しているとのこと。日系のゴム工場もかなり停止したところがありますが、これは、社員の感染防止というよりは、需要先(自動車工場)が停止したからです。米国は車通勤ですから、社内で、ソーシャルディスタンスを守れば、工場は操業できるという考え方です。当社が代理店をしている北米一のゴムコンパウンド会社HEXPOL社もすべての工場の操業を続けてきました。もっとも自動車ゴム部品用コンパウンドが多い工場は稼働率20%、土木建材用、軍事用ゴムコンパウンドが多い工場は稼働率80%でした。米国ではコンパウンド工場のユーザ―分野別の割合で自動車関係が50%ぐらいで、意外と土木、建材、一般工業、軍事用の分野が多いのです。また医療用ゴム部品(シリコーンゴムのシール、医療器材用ゴム部品)はフル生産でした。国家非常事態宣言がでても、別に工場を止める必要がなかったようです。広い米国の事情を考えれば、そうでしょう。日本のニュースに出てくるニューヨークの様子とかなり違うようです。

 インドのゴム産業も、3月下旬から政府命令で、すべての工場が操業停止。会社も閉まっています。あのスズキ自動車やトヨタ、ホンダの4月の販売台数が0だというから驚きです。スズキの昨年の販売台数は月平均12万台ぐらいでしたから。

 メキシコ、ブラジルもゴム工場は停止か、ひどく低稼働です。コンパウンド工場も停止か、ほとんど注文がない状態です。
さて日本は、世界から見て一周遅れで、どちらかというとゴム製品の需要がこれから減ると考えられます。3月は中国向けを中心にゴム製品の生産が10%減、4月は自動車生産がかなり減りましたが、ゴム部品ではまだ20%減ぐらい、5月は作りすぎたゴム部品の在庫調整で50%減、6月はまだ30%減、その先はまだわからないという感じです。2020年は年間でみると2019年に比較して、12%以上は需要減でしょう。15%減ぐらいかもしれません。社内で感染者が出た、または政府命令で工場停止というわけではなく、需要が減ったので、生産調整ということです。

 今後は徐々に生産が回復していくでしょうが、新型コロナウイルスによる景気後退、世界中の自動車生産減少により、ゴム製品、タイヤの需要減がゴム会社の経営に重くのしかかるでしょう。

 当社もほぼ全員在宅勤務で業務を続けています。新型コロナウイルス感染に気を付けて、健康に留意して、この難局を乗り切りましょう。

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