連載「つたえること・つたわるもの」(86)
令和の3・11〈パンデミック宣言〉、SNS(流言飛語)の拡散。
連載 2020-03-24
参考までに、令和の「3・11」デマ情報をいくつか書き出してみよう。※byは解説の出典。
○花崗岩などの石 ウイルスの分解に即効性がある。(フリマサイトで出品)
⇒花崗岩は、地下深くマグマが固まってできた岩石で、建材や墓石などによく使われる石で、病気への効能などは確認されておらず、科学的根拠は全くありません(産業技術総合研究所地質標本館の森田澄人館長)by NHK NEWS WEB 2020.3.5
○コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲むと殺菌効果がある(SNSで複数投稿・拡散)
⇒人間の体温より低い温度で殺菌できるなんて、常識的に考えてあり得ない。出元の分からない情報を安易に信じるのは危険だ〔近畿大学の吉田耕一郎教授(感染症学)〕by 西日本新聞2020.2.25
○新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不足する(SNSで拡散)
⇒トイレットペーパーやティッシュペーパーのメーカーでつくる日本家庭紙工業会(東京)事務局は「中国の影響で品薄というのは全くのデマ」と断言。by 西日本新聞2.27
○中国で日本の健康保険に“悪乗り”する方法が拡散… 新型肺炎で中国人が押し寄せる危険性/(民主党政権が)健康保険が外国人に悪用される原因を作った(1月25日ごろ拡散)
⇒2011年1月に導入された「医療滞在ビザ」による治療は、国民健康保険制度の対象外で、全額自己負担。by(BuzzFeed Japan 2020.1.30)
同じく、「ソースネクスト・サポート通信」で注意喚起された「マスク不足」詐欺サイト情報。
●ドラッグストアのwebサイトを装ったフィッシング詐欺サイト(医療用マスクのページで、弊社が確認した時点では、購入しようとして必要な情報を入力してもエラーとなり、先に進めませんでした。情報だけ詐取されて購入できない恐れがあります。怪しいと感じたら、絶対に情報を入力しないように)
●スマホに届くマスク販売の広告メール(国民生活センターによると、生活者から寄せられた不審なマスク販売の広告メールに関する情報を調査した結果、架空の広告と判明したとのこと)
平成の「3・11」(東日本大震災)デマ情報も思い出しながら、いくつか書き出してみよう。
☆「放射線対策にイソジン・ワカメがよい」はデマ。放射線医学総合研究所の発表(ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけない。インターネット等に流れている根拠のない情報に注意)を確認すること。
☆「被ばくした作業員2名は東大病院で死亡し、私もその治療に当たりました。」という東大病院放射線治療チームのツイートは、今回の事故ではなく1999年東海村の話。前後のツイートも確認のこと。これは前後の情報欠落による誤読であった。
☆「ヒマワリが放射能汚染を除去」は誤解を招く表現である。「除去」というものの「無害化」ということではなく、あくまで「吸収・蓄積」であり、放射性物質が蓄積されたヒマワリを何らかの方法で適切に処理する必要がある。まだ検証の段階。
☆「福島・双葉病院で病院関係者が患者を置き去りにして逃げた」は誤報だった。すでに県も訂正済みだが、誤報は削除されるだけで名誉回復記事はなし。
SNSなどによる近代的流言飛語(デマ情報)パンデミック(同時多発的感染)の時代に、真実を一つひとつ、その情報の出所を確認する知恵が求められている。
【プロフィール】
原山 建郎(はらやま たつろう)
出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員
1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。
2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。
おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。
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