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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、米中対立で年初来安値更新

連載 2019-09-02


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台前半を中心にやや上値の重い展開になった。8月23日に米中両国が制裁・報復関税を9月1日から強化すると発表したことを受けて、週明け26日の取引では一時155.40円まで値下がりし、年初来安値を更新している。その後は本格的なリスクオフ圧力が発生しなかったことで下げ止まったが、反発力は限定的だった。

 米中対立が世界経済に大きな不透明感をもたらしている状況に変化はみられない。急激な株安を受けてトランプ米大統領は柔軟姿勢も見せ始めているが、全く先読みができない状況が続く中、マーケットはトランプ大統領の発言に一喜一憂する不安定な地合を強いられている。

 ただ、上海ゴム相場は1トン=1万1,000元台中盤でやや底固い展開になり、東京ゴム相場の軟調地合とは逆行する値動きになっている。中国市場では上海株式相場も下げ一服から若干の安値修正の動きを見せており、8月入りしてからの急激なリスクオフ環境に対する反動圧力がやや目立つ状況になっている。

 8月26日には東京ゴム相場の8月限が納会を迎えたが、納会値は154.80円となった。7月限の230.00円からは75.20円の急落であり、7月限の受け渡し後に期近限月の割高感が一気に解消に向かったことが再確認できる。

 これに伴い、当先のサヤは横這いから若干の順サヤ(期近安・期先高)となっており、景気減速局面では通常のサヤバランスが実現している。期先が割安ではなく、期近が割高だったことが確認されている。

 タイ中央ゴム市場では、USSの集荷量が横這いに対して、RSSの集荷量が若干落ち込んでいる。8月29日時点の現物相場は、USSが前週比0.3%高の1キロ=39.80バーツ、RSSが同0.5%安の42.29バーツ。景気減速懸念から大きく値下りすることも、逆に大きく上昇することもなく、決め手を欠いている。コストの視点で下げ過ぎ感は強いが、集荷環境が安定する中では産地主導の安値修正は求められていない。

 中国では、低迷する自動車市場のテコ入れを目的に、自動車購入制限の段階的な緩和・撤廃、新エネルギー車購入支援などが発表された。今年は減税などの支援策が十分な効果を得られていないが、これで同国新車市場の回復がみられると、ゴム相場に対してはポジティブ材料になる可能性はある。

 リスクマーケット全体の地合が定まっていないが、ゴム市場では良好な供給環境や需要見通し悪化を背景とした下押し圧力に対して、生産コストの視点で下げ止まることは可能かが注目される。 

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