連載「つたえること・つたわるもの」(55)
クオリティ・オブ・デス、リビング・ウイルを考える――その2
連載 2018-12-25
ことしの2月、私は第35回日本東方医学会(学術大会)の会頭を務めたが、シンポジウムのテーマに「クオリティ・オブ・デス(安らかな死)をめざす東方医療」を選んだ。つまり、クオリティ・オブ・デス(死の質)の概念を、「安楽(あんらく=心身がおだやかで、満ち足りている状態)で、自然(じねん=あるがまま、そのまま)迎える死」を、ひと言で「やす(安)らかな死」と表現することで、〈安らかな眠りにつく・心安らかな顔・安らかな旅路をたどる〉死のイメージをとらえようと考えたからである。
シンポジストの一人、龍谷大学大学院教授(仏教学者)で佐藤第二病院院長(医師)である田畑正久さんは、この「安らかな死」から、さらにGood Death(よき死)へと積極的なとらえ方を提唱している。
2010年5月に開催された第8回英国緩和ケア関連学会の報告記事によると、医療の中でこれまでタブー視されてきた「死」を「誰にも訪れる必定」ととらえ直すこと、そして、これまでのCure(※治療)をめざす医療を、Good Deathを包括する医療へと転換していくという流れが、世界の医療界に出てきたということです。Good Death、「よき死」です。従来、「死」は不幸の完成であると考えていたけれど、どうも私たち人間の人生という全体を眺めたときに、人間に生まれてよかった、生きてきてよかった、仏教で言うならばあとは「お任せ」という形で、もう何の心配もないと受けとめられて、その人なりの人生を生き切っていく世界、日本人1億2000万人が本当に「よき生」を生き切ったとなる道ではないかということを、私は仏教の学びから教えられます。
(『東方医学』Vol.34 №1 16ページ)
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