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連載「つたえること・つたわるもの」(47)

伝える・伝わる、わかる・わからない、記憶をつなぐ・つむぐ。

連載 2018-08-28

 「呼び出しやすい記憶/呼び出しにくい記憶」について、山鳥さんの解説をかいつまんで紹介しよう。

☆意識に呼び出しやすい記憶
(1)出来事の記憶
 自分の身に起こる一回一回の出来事を記憶する働きで、時間と場所の記憶、そのときの感情、そのときの考えなど、さまざまな情報が混然一体となってくっついている。

(2)意味の記憶
 出来事は移り変わる生活の流れだが、意味はその中の変わらない部分で、生活に必要なさまざまな概念や約束事の記憶のことだが、さらに細かく分けるとすれば、①(あるまとまりを形成している)ことがらの記憶、②(ことがらとことがらの関係がそうなっているかを理解する)関係の記憶、③(たとえば赤ん坊の「イナイイナイバア」でイル・イナイ、アラワレル・カクレルなど、記憶の重ね合わせの中で抜き出される)変化の概念

☆意識に上りにくい記憶
(1)手順の記憶(算数)
 算数の九九など、手順を踏むことで想像力を総動員できるようになる記憶。最初はモノのイメージだが、具体的な三個のリンゴや三匹の犬のイメージから、3という数だけが抽象化され、概念化される。

(2)手順の記憶(言葉)
 言葉のつなげ方(文法)も、決して一度では覚えられない重要な手順の記憶。毎日毎日繰り返し相手の言葉を聞き、自分も毎日毎日繰り返し言葉を使うという生活の中で、言葉を使うときの共通のつなげ方が抜き出され、手順の記憶として定着してゆく。

 このように、「伝える・伝わる」、「わかる・わからない」現象を因数分解していくと、相手の話をただ「考えながら」聞くだけでなく、自分に「わからない」ところがないかどうか、質問を「考えながら」聴く(訊く)が大切であり、その結果として「わかった」ことは新たな記憶としてインプットされる。あるいは、「わからなかった」ことは、「わからなかった」ことが「わかる」と同時に、次の疑問解決のチャンスまで待つか、インターネット検索や専門書閲覧にトライするか、どちらかをチョイスしなければならない。
ぐずぐずしていると、チコちゃんに「ボーっと聞いてんじゃねーよ!」と叱られる。ご用心ご用心!

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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