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連載「つたえること・つたわるもの」(47)

伝える・伝わる、わかる・わからない、記憶をつなぐ・つむぐ。

連載 2018-08-28

 和語(やまとことば)の「つたふ(伝・傳)」は、『字訓』普及版(白川静著、平凡社、1995年)に、【此方から彼方へと、何かをつたって進むことで、「つつ(※筒)」「つた(※蔦)」がもとの形。つたって移動することから、他に伝え知らせること、伝え渡すこと、また以前からあるものを伝えつぐことをいう。】とあるように、目で文字や画像を確認したり、耳でしっかりことばを聞きとるだけでなく、筒を通して此方から彼方へ「伝わってくる」、あるいは蔦(の蔓)を手で伝いながら「伝わっていく」身体感覚であるらしい。

 ところで、Aのメッセージが「伝わった」かどうかを知るには、Bが本当に「わかった」かどうかを確認すればわかる。Aが「伝えた」メッセージのポイントを、Bに自分のことばで「要約」させてみるとよい。

 神経内科の専門医で脳科学者の山鳥重さんは、『「わかる」とはどういうことか』(ちくま新書、2002年)の中で、「わかる(わからない)」ためには、何よりもまず「考える」ことが大切だと述べている。

 われわれは「わかった?」「いやわからない」「あ、わかった」「うーん、もうちょっとでわかりそう」「もう何がなんだかわけがわからない」などと言い交わして毎日を送っています。

 このわかる・わからないという表現は、考えるからこそ出てくる言葉です。すべてわかっていれば考えることはありません。わかるという表現すら必要ないでしょう。わからないことがあるからこそ、わかったという事態も発生するのです。わからないことがわかったと思えるようになるのは、考えたからです。考えなければ、わからないままです。
(同書8~9ページ)


 この一文に出会ったとき、NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』のなかで、いい歳をした大人が、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られるシーンを思い出した。前回の放送(8月24日)では、「お風呂で手足がふやけるのはなぜ?」という問いに、「そんなこと、ふだんは考えたこともない」出演者の岡村隆史、朝比奈彩、長嶋一茂たちが的外れな答えを連発して、チコちゃんに叱られていた。

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