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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、安値膠着相場が続く

連載 2018-08-06


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=160円台後半をコアに揉み合う展開になった。新規手掛かり難から上海ゴム相場が狭いレンジで横ばい気味の展開になる中、東京ゴム相場も動意を欠いた。値動きの鈍さから身動きが取れなくなった因果玉が増えており、取組高が増加傾向を強めている。

 7月30―31日の日本銀行金融政策決定会合後に為替相場が円安に振れたことはポジティブだが、その一方で米中貿易摩擦を更に深刻化させるような動きもみられ、明確な方向性を打ち出すには至らなかった。

 上海ゴム相場は1トン=1万0,000―1万500元の狭いレンジ内での横這い商況が続いている。米国との通商リスクを背景に中国株安・人民元安が進んでいるが、上海ゴム相場に対する影響は限定されている。トランプ米政権は2,000億ドル相当の中国製品を対象とした第3弾の対中制裁を巡り、追加する関税率を当初計画の10%から25%まで引き上げることを米通商代表部(USTR)に指示している。ただ、ゴム相場に対しては、「相場押し下げ要因」というよりも、「上値圧迫要因」との評価に留まっており、大きなインパクトを与えることはなかった。

 産地ではフィリピンなどで洪水被害が報告されているが、ゴムの主要生産国の気象環境は総じて安定している。地球規模で熱波が発生しているため、突発的な天候不順の影響も警戒されるが、現時点ではゴム生産に対する具体的な被害等は報告されていない。

 タイ中央ゴム市場の集荷量も安定しており、8月2日時点の現物相場はUSSが前週比0.5%安の1キロ=42.83バーツ、RSSが同1.4%安の43.85バーツになっている。ともに今季最安値を更新しており、急落こそみられないが緩やかなペースでコアレンジを切り下げる展開が続いている。こうした中で、東京や上海ゴム相場が上昇する必要性は乏しい。

 警戒されるのは生産国政府の市況対策だが、タイ政府は面積削減の検討を明らかにした後、具体的な動きを見せていない。カンボジアは、自国の生産規模が小さいことや、いつ市況対策の効果でゴム相場が上昇に転じるのか分からないことなどを理由に、政策調整の可能性を否定している。

 このままお盆休みに向けて膠着気味の展開が続く可能性も低くないが、産地現物相場が明確なダウントレンドを形成している以上、消費地相場も下値不安を抱え続けることになる。焦点になるのは上海ゴム相場が1万元の節目割れからの値崩れを起こすか否かであり、産地相場安や通商リスクの高まりを背景に、ボックス相場を下抜けするか否かに、マーケットの関心は集中している。

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