園部吉規さんは入社25年目。営業職から経理課へ異動という、イノアックの中でも異色の職歴を持つ。
「営業と経理は、全然違います。本当に同じ会社なのか?って思うくらい」
経理課へは自ら希望して異動したという。「やりたいことをやらせてもらっている」と園部さん。イノアックの柔軟な姿勢がうかがえる。
大学時代は商学部で学んでいたとのことだが、なぜ化学メーカーのイノアックに入社しようと思ったのか。また、異色の職歴の背景についてなど様々な話を聞いた。
--就職活動時、イノアックのことは何で知りましたか。
園部イノアック自体はもともと知っていました。自転車【※】が好きだったので。だから入ろう、ってわけではなかったんですけど(笑)。
--では、イノアックに入社しようと思ったきっかけは何でしょう。
園部私が就職活動をしていた時期は、氷河期1年目だったんですよね。バブルがはじけた後で。確か「就職氷河期」って新聞に初めて載った年だったと思います。
時期が時期だったので、入れる会社に入るしかないっていう感じでした。
大学が東京だったので、最初は東京で活動していたんですが思うようにいかなくて。
--最初は東京で働きたいと思っていたんですか?
園部いや、地元に帰れるなら帰ろうと思っていました。
名古屋へ帰ってきて、地元で活動したらいくつか内定をいただきました。
その中でイノアックが一番いいなあと思ったので、入社を決めました。
--イノアックの良いところ、具体的には何でしょうか。
園部独立系で、社風も風通しのよい感じがしました。
銀行とかも受けていましたけど、自分には型にハマった仕事は無理だなと思って。その対極にあるのがイノアックだなと。
--銀行も受けたとのことですが、他にも受けた業界や業種はありますか。
園部業種は自動車と電気だけは除きました。
当時、環境問題に関心があって温暖化を改善できるのは化学業界だと考えていました。それで、化学関係に結構行きましたね。薬品とか…手当たり次第色々行っていました。いい機会だと思ったので。
--いい機会?
園部就職活動の時、学生という身分で会社側が真剣に話をしてくれる機会ってすごく貴重だと思ったし、二度とないだろうとも思ったので色々な業界を回りました。
マスコミ、銀行、食品関係…色々ですね。
当時エントリーはハガキだったんですけど、300枚くらい出しました。その中で面接を受けた会社は50社ぐらいです。毎日2社ぐらいずつ面接していました。
--入社当初は営業配属だったとのことですが。
園部そうです。発泡品と化成品の営業を経験しました。 18年ぐらいは営業畑でしたね。
--営業の面白さは。
園部好きなところへ行けること、全く違う業界の人に会えるのは営業の面白さかなと思います。イノアックは「営業はここにしか行ってはダメ」ってないんですよ。自分が「この業界に何かネタがある」と思ったら好きな場所に行かせてもらえる。
営業に限らず、イノアック全体がそうですけどね。ここをやってみたいって言えば、じゃあやってみろって言ってくれる、そういう文化ですよね。
--営業の時に大変だったことや、やりがいは。
園部その時その時のことで手一杯で、常に大変でしたね。 お客さんと仲良くなれると楽しかったです。それで最終的に受注に繋がるというのは、やりがいになりますね。より売り上げに繋げられるかっていうのが営業にとっていいことなので。
--お話していると、営業ならではなのかは分かりませんが、ご自身を飾らずにさらけ出してくれている印象を受けます。
園部そうですか?ありがとうございます(笑)。
営業時代、お客さんに好かれていたかはわからないんですけど(笑)。やっぱりキャラクターなので、好かれたりなかなか溶け込めなかったりという事もありましたね。
ギクシャクしてしまう時もありました。
--それでも営業は面白かったですか。
園部営業は、実際に作ってはいないんですけど、モノを作っている感じがするんですよ。
お客さんのところへ行って、設計や技術の人と一緒にやりとりするのは面白かったですね。新製品が立ち上がると嬉しくて。ニーズに向き合いながら、自分の提案した材料が使われて製品化されたりするので。そういった達成感はありましたね。
--現在のお仕事について教えてください。
園部一口で言うと本社経理というところになります。経理業務全般ですね。月次損益の締めをしたりだとか、予実管理をして経営層に報告するという感じです。あとは、税務申告などの申告業務も私の管轄ですね。
そこに付随するものが色々とあります。
--経理の配属になって、どれくらいですか。
園部5年目です。
--営業と経理は全然違いますか。
園部全然違いますね。本当に同じ会社なのか?って思うくらい、違う会社みたいな感覚です。
--営業から経理課へ、異色の職歴だと思うのですが、希望しての異動なんでしょうか。
園部希望で移りました。
--経理に移りたかった理由は何でしょう。
園部税理士の資格を取ったからですね。資格を登録するのに実務経験が必要だったんです。経理の業務なら、実務経験として認められるとのことで。
--税理士資格は営業職中に取ったんですか?
園部そうです。
--なぜ営業職の時に税理士の資格を取ろうと思ったんでしょうか。
園部40歳近くになって定年を考えたとき、定年を無くしたいなあと思ったんですよね。定年後も仕事がしたいと思って。まあ明日死ぬかもしれないんですけど(笑)。
やっぱり、先のことはわからないじゃないですか。
--この資格は、外部で取られたんですか。
園部そうです。予備校に通って取りました。
簿記の二級から勉強しましたね。
--会社は割とそういうのを奨励されるんでしょうか。
園部イノアックは自己啓発をすごく奨励していて。資格はどんどん取れって言ってもらえます。
大学が商学部だったんですが、当時は会計科目が大嫌いで、絶対税理士にはならないとか思っていたんですけど(笑)。
--どうですか、また勉強し直してみると。
園部今だと、税務は面白いですね。
やっている業務の中で一番やりがいがあります。
--一つの会社の中で、感覚的にやりたいことや、実務的にやりたいことができているって贅沢ですね。
園部やりたいことをやらせてもらっていると思いますね。
--経理の面白さは、税務の他に何かありますか?
園部面白さというか、プレッシャーが大きい分、やりがいが大きいですね。経営指標を出すので、そこを間違えていたら極端な話、事業の方向が変わってしまう可能性もありますし。
経理担当になってまだ5年目で、至らない点もまだまだあります。ですが、求められるもの、期待されている部分は大きいと思っています。
--先ほど、営業職中に資格を取って経理へ、というお話でしたが、園部さんのような方はほかにもいらっしゃるんですか。
園部いえ、聞いたことないです。
資格を取って移ってきたのは私だけです。営業から経理に移る人って結構珍しいと思いますよ。
--周りはずっと経理所属という方が多いですか。
園部そうですね。
中途で、前の会社で営業をやっていたって人とかはいますけど、イノアックに入社してからはずっと経理という人がほとんどだと思いますよ。
--営業の方は数字を作っていく、一方経理の方は数字を管理していくということで、対極的なイメージがあります。
営業を経験したうえで経理へ来て、周りと違うことはありますか。
園部僕が営業から移ってきて有利だなと思ったのは、“営業のことがわかる”ことです。経理の経験が少ない分、そういう点でカバーしていると思っています。
経理の人って社内の人としか会わないんですよ。工場の人に会ったりはするんですけど、お客さんとは会わないし、営業との接点はないんです。実際、僕が営業だったときも、経理との接点はありませんでした。さっき知らない会社だと思ったって言ったのは、知っている人がいなかったからなんですよね。
--現場を知っているということが強みですか。
園部営業は材料の名前を知って製品を触っていないと売れないです。逆に経理の人ってモノに触れる機会が少ないんだって思いましたね。
サプライチェーンも把握していますし、売り上げの波も理解しています。
--数字だけではなく、リアルな感触も分かってくるということですね。
園部まあ、そうですね。
僕は少なくとも、発泡品と化成品の方は経験しているので、そういったやりやすさはあるかもしれません。
--これから経理課に入ってくる人がいたとして、こういう人は向いているだろうな、逆にこういう人は厳しいだろうなというのはありますか。
園部経理、会計って専門職なので、知識があったほうがいいですね。けど、新卒だとしたら知識は後からついてきますので、知識よりもコミュニケーションができるかどうかだと思います。
--「コミュニケーション」とは具体的にどういったことですか。
園部困ったことを困ったと言えるかです。
よく、「困ったなあ」と思っているだけでずっと抱え込んでいる人がいるんですよね。それで、最後の最後に「実は…」って言われて「もう遅いよ!」っていう(笑)。そういうことがない人がいいですよね。
--困ったことをちゃんと「困った」と言える人がいい、ということですね。
他に何かありますか。「これができないとまずいな」とか。
園部管理部門なのである程度は「整理整頓ができる」のが望ましいですね。
モノを片付けるだけではなくて、ファイルの管理がちゃんとできるとか、自分が作ったファイルをどこに置いたか理解しておいてほしいです。
あとは納期が守れること。
最後は本当に基本的なことで、経理とか関係ないんですけど、『報連相』は大事ですよね。
経理部門の仕事って、皆でワッと一斉にはできないんです。誰がどこをやったかわからなくなってしまって、混乱するので。
経理業務はできるだけ細分化して、一人ひとりに分けていきます。その分かれた業務に対して責任をもって作業して、納期を守って。間に合いそうになければ早めにヘルプを出す。そういうことができる人が望ましいですね。
--自分の現状を自分自身で理解していないといけない。それをきちんと報告して、最終的には納期を守ることに繋げていくんですね。
園部もし、自分がどれだけできているのか分からないのであれば、それはそれで報告するってことが大事だと思うんですよ。納期は一週間後だけど、「今日一日でここまでできました」とか。そういう報告があると良いなと思うんです。
--いわゆる、「コミュニケーション能力」に繋がりますね。
園部そうですね、一口に言えばそうなっちゃいますけど。 何を考えているか伝えてくれるっていうのが大事ですね。 そのためには、こっちもできるだけ言いやすい環境というのを作ってあげる必要があります。
--今までお話を伺ってきた方たちも、同じようなことを仰います。相談しやすい環境など、コミュニケーションが大切だと。
園部イノアックは個人個人の力を大切にしているから、それを会社として機能させるためにコミュニケーション能力が必要なんでしょうね。
--個々を動かしていく一つのツールとしてコミュニケーション能力が欠かせないということですね。
園部そうだと思います。
--先ほど、50社ほど面接を受けたとのことでしたが、その経験を踏まえた上で何か就活生にアドバイスはありますか。
園部最初の頃は面接を受けてもバンバン落ちていたんですけど、だんだん慣れてきて。こういうことを聞きたいんだなってわかってきましたね。僕らも面接する側になると聞くこと一緒なんですよね。学生だったら、「学生時代何をしていましたか」みたいな。
コツをつかんだら、結構上のほうまで上がれるようになりましたね。
--たとえば今の就活生にアドバイスするなら。
園部自分を売り込む場面ですから、マニュアルに頼らないほうがいいかなと思います。
私も当時はマニュアルを読んだり、セミナーに行ってみたりしたんですけど…実際には、なんだか参考にならないなあって思いました。
何かしら自信を持てることってあると思うんですよね。それをアピールできたらいいんじゃないかなと思います。
僕が面接をしていて思うのは、こちらは学生に多くを求めていないということ。現状の自分を素直に出してもらえればいいですね。
面接慣れしてくると、最初は決めたことを話すんですが、だんだん自分の言葉で話せるようになりますから。そうすると面接もうまくいくようになりますしね。
企画・制作:ポスティコーポレーション
1995年4月
2001年8月
2004年6月
2005年10月
2009年8月
2013年10月
入社
化成品・情報機器事業部 営業企画部
(株)ロジャースイノアック出向
発泡品カンパニー 営業部
産業資材営業本部 開発営業部
グローバル営業部
グローバル経営管理部
現在に至る
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