「イノアックは、一人一人に与えられる仕事の範囲が広いなっていうのは思いますね」

榊原弘和さんが考えるイノアックの特長だ。
入社13年目。グローバル技術本部の材料技術部 モールドウレタン材料開発室に所属している。ウレタンのモールド製品の材料開発を行っている部署だ。

「材料開発ということで、お客さんのニーズを汲み取りながら材料を開発、PRをして、それを採用して頂いて、実際に立ち上げていくというところになります。 製品化への準備においても、材料を開発したのはこちらになるので、生産技術チームのフォローもします」

他にも、量産している製品の不良対策、使っている材料のコスト低減。突発的な生産トラブルに対し、現地に行ってそれを解消する仕事も。開発だけでなく、量産中のところまで面倒を見ているとのことで、その仕事は多岐にわたる。榊原さんの言葉の通り、仕事の範囲は広い。

感じた4つの魅力

--入社のきっかけは?

榊原大学の研究室に4年生から所属していた時、院生の先輩がイノアックに入社すると聞いて、イノアックという名前を知りました。
そこから興味を持ち、自分で調べた所、 様々な素材を扱っていて、グローバルにも色々なところに拠点があって、身近なものを作っている会社なんだなと。

--そういった点に魅力を感じた?

榊原そうですね。あとは、工場が安城(愛知県)にあって、出身地に近いなと(笑)
今はないんですけど、目と鼻の先くらいにあった喫茶店に幼少期よく来ていて。『あ、身近にあったんだな』と思って親近感を感じました。

--なるほど。
様々な素材を扱っていること。グローバルに拠点がいくつもあること。身近なものを製作していること。地元にあって、親近感を感じたこと。この4点に魅力を感じたんですね。

榊原はい。
それで、1番に採用が決まったのがイノアックコーポレーションでした。そこで就職活動を終わらせました。

--では、最初からイノアックを希望していた?

榊原そうですね、希望する気持ちは強かったです。
大学では化学を勉強していて。
イノアックの、材料と材料を組み合わせて新しい素材を作り出す、というのが大学でやっていたことに近いなと。大学での知識や経験を活かす事が出来て、かつ自分には向いてるんじゃないかと思いました。

--入社当初、興味があった部署はありましたか。

榊原ウレタン、発泡品に行きたかったです。身の回りにある製品に関わりたいと思っていました。
実際には同じ材料でも、自動車の方に配属になりました。
今となっては、自動車にも興味を持つようになったので、これはこれでよかったなと思っています。

--グローバルな部分に惹かれたのはなぜですか。

榊原大学時代、国内ですがバイクや鉄道で旅行に行くのが好きで。
1つの地域で仕事をするよりは、色々な場所で働いていたいという思いがありました。
そういう点で、グローバルに拠点があることに魅力を感じました。

--働いている今も旅行に行かれたり?

榊原今は家庭があって難しい部分もあるんですけど…今度、家族で沖縄旅行に行きます。

--いいですね!仕事と、プライベートも両立しやすい環境にあるんですね。

榊原そうですね。

日々苦労の連続だけど、相談しやすい環境がある

--今まで大変だったことは?

榊原材料開発にいるので、日々苦労の連続ではあります(笑)
入社2年目になってすぐ、中国にヘッドレスト【※】の新ラインの生産準備でいきなり1人で出張に行ったんです。

 

※ヘッドレスト
自動車の座席の背もたれの上部の枕状の部分

 
   

--1人で!

   

榊原はい。材料面での仕事でした。
まだ新人だったので、材料の配合は先輩が決めてくれていて。それをもとに、私は現地で細かい調整を行うという仕事でした。
でも、実際に現地で発泡してみると、ウレタンが膨らんだと思ったら、萎んでしまって。本来ならある程度膨らんで止まるはずなんですけど。どうしよう…って。

--どう対応したんですか。

榊原なんとか材料を調整して。納入には間に合わせました。
でも、当初2週間の予定だった出張が4週間に伸びてしまいました。

--出張、ということで語学研修などは経験がなかったと思うのですが、言語の壁はどう乗り越えたんでしょう。

榊原一応中国語の電子辞書を持って行って。それでなんとか。
現地に日本人のスタッフもいたんですが、常時いるわけではなかったので。なかなかコミュニケーションが難しかったですね。
でも、トラブルに対する勉強になりました。その経験を生かして、事前準備に力を入れるようになりましたね。

※本人提供

--事前準備が生かされた、という経験はどういったものがありますか。

榊原入社3年目ぐらいに材料技術、自動車部門だったんですけど、どんどん先輩方が異動されて。私を含めて、3人だけになったんです。もともと10人くらいいたんですけど。その3人で、モールドウレタンの色々な工場の面倒を見なくてはならなくなった時期がありました。
メインは材料開発でしたが、各工場で何かあれば、すぐに対応しなければならなくて。

--その状態はどのくらい続いたんですか。

榊原1年くらいです。
運よく大きなトラブルはありませんでしたが、同時多発的になにか起きていたらと思うと今でもヒヤッとしますね。

--当時、気を付けていたことなどはありますか。

榊原発生する不良にはある程度予測できる対策があるわけで。各工場の各製造ラインの方にはケースバイケースでの不良対策のやり方をまとめた資料を作って配布しましたね。

   

--資料作り。マニュアルのようなものでしょうか。

   

榊原そうですね。できる限り、未然にトラブルを防ぐようにしていました。

※本人提供

--“事前準備”を徹底したんですね。
ですが、それでもトラブルが起きてしまうこともあると思います。そういったときの対応策はありますか。

   

榊原相談できる人を作っておく。上司や同僚だったり、時には他部署で設備に詳しい人も。そういう環境を作っておきます。

   

--なるほど。自分なりの環境づくり。

   

榊原はい。
全部自分1人でできるわけではありませんから。

新しい材料を生み出すことが、会社、そして社会に貢献している

--仕事をする上でのやりがいや、モチベーションは何でしょう。

   

榊原新しいウレタン素材を生み出すのが自分の仕事。自分の開発したウレタンが製品として世の中に出ていくということで、すごいやりがいを感じますね。
実際色々なところで、私が開発したウレタンが採用されています。採用されると、そこで新しいラインが生まれるんですね。ラインができるってことは、そこに新しい雇用が生まれるということで。利益になりますし、働く人も増えるんです。

--つまり、新しい製品を生み出し、それが世の中に出ていく。そのことが、会社に貢献すると同時に社会にも貢献している。それが、やりがいに繋がっているということでしょうか。

   

榊原そうですね。
実際に九州のある工場で、元々作っていた製品の受注が減っていて。生産ラインがスカスカになっている状態だったんです。このままだと採算が難しいという話がありました。 そんな時に、私が新しく開発した製品がその工場のラインに乗ることになったんです。今やその製品がラインのほとんどを占めている状態です。
その製品がラインにのった事で、そこで働いていた方たちの雇用を維持することにつながったので、良かったなあと思います。

--ちょっと農作業と似ていますね。
畑を耕して、そこから実がなる。スペースを埋めていくことで、雇用も増えていく。ものづくりの基本のような。

   

榊原どんどん自分のラインが増えていくのが楽しみというか。
結構増えていますね。その工場は、もうそこでは生産を賄いきれなくて、新しい工場を造ろうかという話も出ています。

※本人提供

--先ほど新しい材料を生み出すのが仕事、と言っていました。新しいものを作るとき、“いいものを作りたい”という思いと、コスト。この相反する2つの組み立てについて、どう考えていますか。

   

榊原コスト優先ですね。性能が高いとコストが高くなってしまう。でもそれだとお客さんは買ってくれない。
コストをかなり意識しながら、新しい機能を持たせるっていうのを考えていく。

--こんなにいい製品なのに、こんないい機能なのに、なんでわかってもらえないのかと、歯がゆい思いをしたことはありますか。

   

榊原ありますね。

   

--そういう時はどうするんでしょう。

   

榊原諦めないことですかね。
いつかチャンスは来ると思っています。
中には色々あって採用に至らないケースも当然あるんですけど…結構待っていると、状況が変わったりすることもあります。そういったときにすぐ対応できるように引き出しをたくさん持っておきます。

--引き出し?

   

榊原お客さんから求められたときに対応できる技術を持っておくことですね。
いつでも対応できるように、切れるカードをたくさん持っておく。

--なるほど。事前準備を大切にする榊原さんらしい考えですね。
少し話は変わりますが、榊原さんにとってウレタンモールドの1番の魅力はなんでしょう。

   

榊原そうですね…なかなか難しい質問ですね(笑)
ウレタンって、単純に膨らませるだけじゃないんですよね。色々な要素が入ってくると思っています。
モールドの場合、やっぱり金型の中で膨らませるっていうのは技術的に結構難しくて。どこかでガスを逃がさないと、中でガスが溜まって欠肉したり、ウレタンが破泡してしまい、それで外観が荒れてしまうとか。そういうことがあるので、材料だけ見ていればいいわけではなく、条件面も重要視しなければならない。
そういったところを自分でトライ&エラーを繰り返しながら、最適なところに持っていくっていうのが難しいところであり、面白いところですね。

--日々仕事の中で、1番のモットーは?

   

榊原やっぱり自分なりにこう…仮説を立ててというか、目星をつけて、仕事をするっていうのは心掛けているところではありますね。
一から十、全てやるのはナンセンスかなと思いまして。組み合わせを全てやっていては、時間もすごい掛かりますし。勿論、中にはそういうタイプの方もいるとは思うんですけど。けど自分はやっぱり、あらゆる可能性の中からチョイスしていって、最適な道を導き出すっていうところを意識していますね。
最終的には、いかに効率よく結果を出せるかっていうところで自分なりに頑張っています。

--大学時代にも、新たな素材・機能づくりに関する研究をしていたそうですが、やはり今と学生時代では責任の重さは違いますか。

   

榊原そうですね。
学生時代は、不良とかってあまり意識してなかったです。
でも、今考えなきゃいけないのは不良をいかに…ということで。仕事なので『とりあえずできればいいや』じゃなくて、会社として儲からなきゃいけないわけですから。

--なるほど。
榊原さんは、イノアックはどういう会社かと聞かれたら何と答えますか。

   

榊原1番はウレタンの会社、ですかね。あとは自動車の割合が多い会社でしょうか。やっぱり自動車関係は比率を大きく占めているので、その話はしますね。
イノアックはもっと知名度があっても良い会社だなと思っていまして。結構身近にいろいろなところで使われているものを作っている会社だと思うので。
いろいろなことをやり過ぎていて、なかなか一言では言えない会社だなっていうのはありますね。それが企業理念【※】にもあると思うんですけど…やっぱり一言では難しい会社ですね。

   
 

※イノアックの企業理念
『一本の大きな木を育てるより、多くの個性ある木を育て、美しい森をつくる』。 暮らしをもっと豊かにしたい、という思いから、ひとつの事業に特化することなく、ウレタン・ゴム・プラスチック・複合素材という4つの苗をもとに、多くの事業(=木)を育て、企業体として多彩な製品、サービスを作り出し、社会へ貢献している。

 
   

--いいじゃないですか。「一言では言えない会社イノアック」。

   

榊原なんでもありといえばなんでもありですね(笑)

   

--入社して13年目、今まで働いてきて思うイノアックの特長は何だと思いますか。

   

榊原その人に求められる責任じゃないですけど、仕事の範囲は広いなっていうのは思いますね。これはたぶん、ほかの会社にはないぐらいの広さじゃないかなと思います。というのも、さっき言ったように3年目で、3人で工場を見なきゃいけないとか。

   

--確かに、製品の開発、PR、ライン作り。工場も面倒を見て、支えたり。榊原さんのお話を聞いていると、社員一人一人に与えられる役割は多いと感じます。

   

榊原そうですね。
この間タイに出張に行った時も、その現地のメーカーの方々と食事に行く機会があって。そこで『イノアックさんの、一駐在さんに求める仕事の役割が半端ないですよね』って言われましたね(笑)

--じゃあ自他ともに認める、役割が多さと仕事の広さなんですね。

   

榊原そうですね。ただそれは、たった1人でほったらかしというわけではなくて、やっぱり助けてくれる人がいます。助け合いや相談、そういうのを大事にしている会社なのかもしれませんね。

   

正直、化学ができなくてもいいんじゃないかと思っています

   

--どういう人が向いているか、またどういう人と働きたいですか。

   

榊原細かいことに気付く人が良いなと思いますね。

   

--細かいことに気付く?

   

榊原はい。細かいことに気づいていない人っていうのは、変化点にも気づきにくいと思うので、新しいことができないんじゃないかなと思うんです。
あとは、若い人にどんどん入ってもらいたいですね。
うちの部署はどんどん平均年齢が上がっていまして、50代が多い部署になっています。そういう方々と会社で一緒に働ける時間も限られているので。

--若い世代にどんどん技術も学んでいってもらいたい?

   

榊原そうですね。一緒に仕事ができればなと思います。

   

--たとえば、今まで違うことをしてきた人でも良いんでしょうか。

   

榊原正直、化学ができなくてもいいんじゃないかと思っています。日々、化学式とか化学の知識とかあまり使ってなくて。化学をやってこなかった人でも、やっていけるんじゃないかと思います。
私自身も合成とかはあまりやったことはなくて、そういう知識もほとんどない状態です。それでもやれている世界です。もともとある材料をどう組み合わせるかを考えるのが大事なので。

--畑が違う人でも、大丈夫なんですね。

   

榊原会社に入社したばかりの頃、『材料開発の部署は、入ってすぐ即戦力にはならない』と当時の部長に言われました。 実際3年ぐらい経たないと、身につかないというか。発揮できない部分があります。
そういう意味でも、気長に待ってもらえる部署じゃないかなと思います。

--ところで、女性の技術者に対する受け入れはあるんでしょうか。

   

榊原はい。女性だから仕事がやりにくいなんてことはないです。
他部署ですけど女性も活躍してます。女性がいると雰囲気はよくなりますよね。女性の視点も大事だなと思います。

--仕事の在り方が変わってくるかもしれませんね。

   

榊原モールドは重い金型を使ったり、結構力仕事も多くて。でも力のない女性でも扱える軽い金型にしてみようとか、そういう意見が出るかもしれませんし。 ぜひモールドウレタンの材料開発にも来ていただきたいですね。

   

企画・制作:ポスティコーポレーション

榊原 弘和

2006年4月


2007年1月

2009年4月

2012年2月


2014年5月

入社
オートモーオティブテクノカンパニー
(現グローバル自動車関連事業本部 ) 技術本部
オートモーオティブテクノカンパニー技術本部
開発部ウレタン材料技術課
技術本部(現グローバル技術本部)
技術開発部 材料開発課
自動車関連製造部
(現グローバル自動車関連事業本部)
技術本部 技術開発部
グローバル技術開発本部(現グローバル技術本部)
ウレタン基礎材料室 モールド G
(途中組織的な変遷あり)
グローバル技術本部 モールドウレタン材料開発室
吸遮音 G

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