「オールイノアックの目線が必要だと常々感じています。まだまだ至らない点が多いですね」
多種多様なイノアックの製品群。それを全て知ることが商機につながってくる――自動車関連事業部 樹脂製品開発部に所属する長屋宏さん。2017年入社の、中途採用組だ。
開発の肝はニーズを知ること、そしてその中でイノアックとして何ができるのか考え、実行する。“何ができるか”を考えるために、製品群を知ることは必須だ。
長屋さんには以前の職場で学んできたことや、イノアックの印象など、様々な話を聞いた。
--イノアックの入社理由は何でしょう
長屋以前の職場から離れた場所に引っ越したこともあって、もっと近い職場で働きたいと考えていました。 転職活動の際は、ほかの会社も受けましたが、イノアックにしました。最も、近い会社だったので。
--場所もとても大事だと思うのですが、他に決め手はありましたか。
長屋仕事として、今までやってきたことを生かせるところに就きたいと思っていました。
実はイノアックの前に、もう1社に勤めていたんです。イノアックが3社目ですね。2社目は自動車関係ではあったんですが、金属を担当していました。それまでやってきたことを全く生かせなかったわけではないんですが、やはりもっと生かせるようなことをしたいな、と。
それと、その会社の仕事内容が決められたことを行うという感じで、正直ちょっと面白くなくて。型にハマらない仕事がしたいと思いました。
--もう少し、自分のやりたいことができるような環境に身を置きたかったということでしょうか。
長屋そうですね、置きたかったというのはあります。
--特に1社目の経験を生かしたかったということだと思うのですが、1社目ではどういったお仕事を。
長屋自動車部品のメーカーに新卒で入社し、生産技術をずっとやっていました。
--新卒の時の入社のきっかけ、また学生時代はどういったことを学んでいたんでしょうか。
長屋1社目は、推薦で入社しました。高専だったんです。
同期は100人くらいいましたね。
その時はゴムや樹脂をやりたいという気持ちはなかったです。学生の頃は金属について学んでいたので、当時はやるなら金属がいいなと思っていました。ですが、ゴム・樹脂の部門に配属になりましたね。
--ゴム・樹脂が面白いと思ったきっかけなどありますか。
長屋以前はずっと、ゴム・樹脂の成形機や、いわゆる加工機など、生産技術の中でも新製品・新規工程の立上げを担当する部門にいたんです。
それは面白かったですね。特に、新製品を立ち上げる設備設計・仕様設定から試運転に入るまでがすごく面白いんですよ。
その設備を、設備屋さんなどに手配して、コミュニケーションをとって。そういう血が通ったやり取りができた仕事はとても面白かったですね。
--現在のお仕事について教えてください。
長屋自動車関連事業部の開発部門で、自動車部品を開発する業務を行っています。
具体的に言うと、展示会に行って「これからどんな部品が使われるんだろう」、「どんな部品が増えていくんだろう」という、いわゆる市場動向を調査します。イノアックとしての特長を生かせるような部品、イノアックだったらこうする、こう出来るというコンセプトを打ち出して、新たな部品を開発するという仕事をしています。
他にも、要素的な開発も含まれています。例えば「作り方を変えたい」とか、人の手が掛かっていたものを自動化するとか。そういった開発ですね。
--自動車部品の開発というと、カーメーカーの意向に沿っての開発というイメージでした。
長屋どちらもありますね。お客さんとの共同開発や、自分たちで「私たちはこういうことをやっているんですけど」という形でPRして、商品を売り込むパターンもあります。
--お客さんからニーズをもらうパターンと、自分たちから売り込むという2つのパターンということですね。
長屋そうです。
--今までは生産技術を担当されていて、開発の経験はなかったとのことですが、そういった仕事をイノアックに入社してから経験してみていかがですか。
長屋やっぱり、お客さんに売り込むという技術営業は初めてだったんですよね。すごく勉強になります。お客さんにどう売り込めばいいんだろうっていう。
以前は与えられた仕事をこなしていく感じでしたが、イノアックではそうでもない。まず、何も与えられていなくて。お客さんからニーズは聞きますが、そもそも自分の扱っているモノは何が売りなのかという部分も含めて、知っていないと売り込めないですから。
お客さんに自分たちのアイテムを展示会で紹介するというのもよく経験させてもらったんですけど、やっぱり知っておかないと相手に興味を持ってもらうアクションにも繋がらないんです。全く売れないんですよね。
そういった一連の流れ、受注につなげるまでの流れっていうのは、今まで全くやったことがなかったので、いい勉強になっていますね。
--面白いですか。
長屋難しい分、面白さはあるなと思っています。
--以前働いていた会社とイノアックでギャップを感じることはありますか。
長屋基本的な仕事の進め方は今までと同じだと思っています。
ですが、棲み分け方は全然違いますね。以前の会社だと、樹脂とゴムの部隊は同じグループだったんですが、イノアックは別々です。絡むことがあまりないんです。
それと、育っていく過程が違うなと思います。
--育っていく過程?
長屋以前、特に1社目は1つのものに対してプロフェッショナルを育てる、という感じでしたが、イノアックでは広く知る必要がある。裾野が本当に広い。製品を全て知る必要があります。
知っておかないと、お客さんから何か言われたときに「こういうのやっています」って言えないですし、そこがまだまだ不足しているので苦労しているところですね。
--今までの経験を生かしたかったとのことでしたが、実際に働いてみてどうですか。
長屋今は開発部門にいますが、以前までずっと生産技術をやっていたので、やはりそこが戸惑いでもあります。製品設計に携わっていますが、経験が少ないので、わからないことが多いです。
けど一方で、自分が今までやってきたことは間違いなく生かせると思いましたね。それはすごく感じました。ですが、人脈はまだまだ少ないなと思います。入社してまだ3年目ですし、「長屋って誰?」っていう、そこからのスタートだったので。
私が生産技術をやっていた時は、開発の人に対する不満があったんですよね。それを今、逆の立場でやっています。生産技術の人が忙しい時に、お願いするっていう。仕方がないんですけど、それをいかにやってもらえるか、というところが難しいですね。
--新しいニーズを知り、製品に落とし込んでいくというお話が先ほどありました。これからのニーズは何でしょうか。
長屋自動車のEV化ですね。
そこにどんなニーズがあるのか、まだわかりませんが、たとえばイノアックだと、ウレタンや樹脂による車体の「軽量化」があります。車体を軽量化して燃費を良くしようっていう。それと、吸遮音。音を静かにっていうニーズはまだまだあります。
--「軽量化」と「吸遮音」がキーワードですね。
長屋そうですね。やはり、自動車、モビリティは今ものすごい変革期にあって、誰も正解がわからない状態です。イノアックとして何ができるんだろう?って。
もっと広い目で見なさいってよく言われますね。自動車そのものだけに注目するのではなく、付随するモノも含めて広い目で見る必要があると思っています。例えば、充電のステーションとか。そういうインフラ関係にも使えるようなものとか…そういう新しいものに対するアンテナを張る。そこは意識しています。
--先を見つめていかなくてはならないんですね。
技術に裏付けされたものではあると思うんですが、そういった分野を見つけ出す勘、感覚を鍛えるにはイノアックの製品を知っておかないとなかなか難しいんですね。
長屋僕自身はイノアックを代表するウレタンをまだよく知らなくて、目線がまだまだ足りていないんですね。何か展示会で新製品を見つけて、部品を見て。そこに使われている部品を何かに代用できないかと考えたとき、自分の持っている知識、例えば樹脂で考えてしまう。「オールイノアック」の目線がまだまだ足りていない。
常に数種類の文房具を作業着の胸ポケットに入れている長屋さん。以前の職場からの習慣で、超効率化を図るためとのこと。
もし、その目線で、ウレタンのことも知っていれば、「樹脂よりウレタンの方がコストを下げられる」といったことを考えることができます。そういった目線が、開発の人間としてまだまだ足りないなと思います。
--「オールイノアック」の目線を得るために、知らなきゃいけないことがいっぱいあると。
長屋ありますね。それが自分の中の課題で、苦しんでいるところです。
展示会に行くと、どうしても得意分野を見てしまうんですね。設備がこれからIoT化していくとかあるんですけど、そういうのをずっとやってきたので。もっとほかの分野にも目を向けていけるようになりたいですね。
--イノアックで働く上で何か必要だと思うことがあれば教えてください。
長屋専門性という点で考えると、正直、化学出身だからゴム・樹脂に携わらなければならないという事ではないと思います。私自身が機械出身で、化学とは関わってきませんでしたから。ゴムの分野だからといって化学の知識が必須というわけではないですね。
--ご自身の経験から言うと、専門にこだわる必要はないんじゃないかと。
長屋ないと思います。
--これから部下や後輩ができたとき、ご自身が気を付けたいことなどありますか。
長屋そうですね、社会人になって十何年経っていますから、世代の差っていうのは感じるようになりました。
どの組織でも若手をうまくやる気にさせるっていうのは、難しいです。どれだけいいモチベーターになれるのかっていうのが、先輩世代としての課題ですよね。
--ご自身が若手だったころを振り返ってみるといかがでしょうか。その経験から、仕事をする上でこうすると良いなど、何かアドバイスはありますか。
長屋私は正直なところ、以前の会社で育てられたことが経験値としてベースになっています。そこでは殆ど、自分で苦しまなきゃいけないっていうのがあったんですね。全部自分で何とか解決しろという世界でした。
やりがいがあったのも確かですが、反面与えられるプレッシャーはすごかったです。今思うと、それはそれですごく成長させてもらえたなって思いますよ。次に同じような困難にぶつかると割と簡単に解決できるようになるんですよね。その時、あの時苦労をしたからって思うんですよ。
--「苦労してほしい」というのが、長屋さんの考えということでしょうか。
長屋いえ。私自身が振り返ってみると、良い経験だったなとは思うんですけど。
正直、若い人たちに「苦労をした方がいいよ」って言っても、嫌になるだけですよね。
どう伝えるか、どうやらせるかっていうのは、個々を見て変えていかなければならないかなって思いますね。先輩としては距離感やバランスを個々に合わせることを大事にしないといけないかなと。
たとえば後輩や部下が壁にぶつかった時、苦しいだけなのかもしれないし、悔しかったから次は絶対やってやるって奮起してくれるのかもしれない。どう感じるかは本当に人それぞれですから。
--個々を見て、丁寧にコミュニケーションをとることが大切だと考えているということですね。
長屋そうですね。
少なくとも、さっきの「苦労した方がいいよ」みたいに、自分の考えを押し付けるようなことはしたくないですね。
--会社の雰囲気や環境で感じる違いや、ここが良いところだなというのはありますか。
長屋基本的には、自由にやらせてもらえるというか。それはあります。その分、「自分はどうしたいか」という考えが必要ですね。それがないと難しい。逆に言えば、「自分がこうしたいんです」を言えば、勿論意見も出ますが、割と自分の意志は通じやすいなということはありますね。
--社内の雰囲気はどうですか。
長屋私の所属している部署は特に、自分と同じ中途採用組が多いです。同じような境遇の人がいるので、その分助けられています。
--イノアックはどんな会社だと思いますか。
長屋先ほどのお話と重なりますが、そもそも自動車部品以外が多いんですよね。外から見ているだけだと分からなかったんですけど。
産業資材の部門っていうのが自動車部品よりも多くて。素材一つとっても、ものすごく多い。それがすごく新鮮でしたね。
--多種多様な製品群について、何か印象的だったことはありますか。
長屋展示会で驚かされることが多くて。イノアックのこの製品が、こんな商品に使われているのか!って。
うちの展示会をやらせてもらうときって、オールイノアックでやるので、ほかの産業資材の方も参加して頂くんですよね。その時に、自分の隣近所って何をやっているんだろうって設営をした時に見に行くんです。見に行くと、自分たちと全然違うことをやっている。すごい驚きですし、こんなのに使われているんだな!ってよく思いますね。
たとえば、私はスニーカーが好きなんですが、コンバースの靴にPORON【※】のインソールが使われていたことを展示会で見て初めて知りました。そういう驚き、結構ありますね。
そういった経験から、安城事業所や櫻井工場を行き来することが多いんですが、そこで発泡品とか化成品の方が成形をやっていると、「何に使うんですか?」って聞くようになりました。全く予期せぬものに使われていたりするので。身近な会社だと思うんですよね。
--社内で新鮮なものを見つけられるっていうのは面白いですね。
長屋全然違う人たちと触れ合うことができるのでそれはもう面白いですよ。「これなんですか?」って単純に聞いただけでも面白いです。幅広いことをやっているがゆえに、面白くて。この会社の魅力だと思いますよ。
企画・制作:ポスティコーポレーション
2017年2月
中途入社
グローバル自動車関連事業本部 開発本部 樹脂製品開発部
現在に至る
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