「かっこいい理由は1個もなくて、純粋に早く働いてお給料をもらいたいなあと」

入社理由を聞いたとき、正直にそう話してくれたのは入社17年目、高機能材料事業本部の発泡品事業部 ウレタン技術部に所属する阿部公彦さんだ。

イノアックでは大きく、自動車部品の事業部と高機能の事業部に分かれている。
阿部さんの所属するウレタン【※】関係の部署は、高機能材料の部門になる。その部門の中でさらに、発泡品、オレフィン、化成品、ゴムエラストマーと事業部が分かれ、発泡品事業部の中にウレタン技術部は属している。

   
 

※ウレタン
 ポリウレタン樹脂。イノアックがウレタンフォーム(ポリウレタン樹脂の発泡)を日本に初めて導入した。
自動車などの輸送機器、住宅、建築、インフラなど様々な工業用途はもちろんのこと、キッチンスポンジやソファ、マットレスなど、幅広く使われている。

 
   

簡単に言うとスポンジを作っています。キッチンスポンジであったり、クッションであったり、あとは枕であったり。実際には、工業用品として使われる自動車用のシートの表面材に使われる材料であったり、女性用のブラジャーのカップとか、そういったものですけど、世間一般で言うスポンジを作っている部門の技術、に属しています」

 

ウレタンを作るために、いろんな原料を配合し、混ぜて膨らます。その混ぜる時どういった原料を使うかを考えるのがウレタンの技術部の大きな役割になる。仕事の範囲はとても広く、できたものを評価し、安全性や消費者に求められている機能を果たしているか、また品質の確認もして、製品として売り出すという。

   

やりたいことが最初からあったわけではなかった

   

--イノアックに入社しようと思った理由は何ですか。

   

阿部かっこいい理由は1個もなくて(笑)
僕は大学卒業して、そのまま入社したんですけど。 はやく就職をしたかったというのと、当時はなにをしたいっていうのも特になくて。大学で化学系の学部に入っていたので化学系の会社、ということで就職活動をしていました。

--イノアックのことは何で知りましたか。

阿部当時、家に送られてくるリクルート雑誌を見てイノアックの存在を初めて知りました。 他社もいくつか受けていたんですが、その時雑誌で見た、「日本のリーディングカンパニー」と「グローバルカンパニー」という言葉が気になって。 海外にも行ける可能性があるんだなということで面接に行って。

--他社もいくつか受けたとのことですが、その中でなぜイノアックを選んだ理由は?

阿部それらは化学系とは違う会社で。
イノアックは「グローバル」っていうのと、大学で専攻していたものに関係していたというところで選びました。
今は「こういうことしたいから入りたい」ってあると思うんですけど、当時僕はそういうのはなかったですね(笑)純粋に早く働いて、お給料をもらいたいなあと。

--なるほど(笑)
「グローバルカンパニー」がご自身の中で引っかかった理由は。

阿部いや、あまり深く考えないタイプなので。その、会社に入るまで海外に行ったことはなくて、純粋に興味があって。
面接のときも、入社した後も、そういうチャンスがあるならぜひ行ってみたいですって、いつも答えてましたね(笑)

入社してから半分以上は海外での生活

※本人提供

--海外駐在期間は、どれくらいですか。

阿部入社してから丸5年経った後、初めての海外駐在がタイになりました。6年ぐらいです。そのあとはベトナムに。2015年からで、丸3年いました。今年の6月に帰ってきて、日本で仕事をし始めて3カ月くらいです。入社してから半分以上は海外で生活していますね。

--海外経験も含め、働いてきた中で苦労した点は何でしょう。

阿部苦労したことはいっぱいありますし、いつも苦労だなと思うんですけど(笑) 海外に行ったり、日本に戻ったり。環境が変わると慣れるまでに時間がかかりますね。今も日本に戻ってきて、それを肌で感じています。

--最初のタイでの仕事は、どんな感じでしたか。

阿部当時タイの会社【※】はもう40周年だったかな。自分と同列の役職になる現地スタッフは自分より10歳ぐらい離れている人たちで、もうしっかり管理されている会社なんです。そこに工場の責任者として行きました。

 

※BANGKOK FOAM CO.,LTD

 

--初めて海外に行ったとき、現地での雰囲気も含めてどう感じましたか?不安は?

阿部不安はありましたね。前の駐在員の人がいて、でも何カ月かしたら当然その人は帰国しますよね。で、自分1人になりますよね。
1年間は言葉も思うように通じないし、自分のやりたいうちの2割とか3割しかできなくて。
で、2年目くらいから少しずつわかってきて、だけどまだ、自分のやりたいこととか、会社に対する自分の存在意義がそんなに出せないなあと。 3年目ぐらいでようやく自分のやりたいことがある程度できたりとか、役割が明確になって。
4年目、5年目でそれがある程度実績になる。6年目以上になると惰性になっちゃうんですよね(笑)マンネリ化してしまう。
3年から5年くらいのサイクルの中で、違うところを経験できるっていうのは、会社抜きにしても、自分にとってすごくいいことだなあと。

--タイに6年駐在して、そのあとベトナムに3年駐在。確かに良いサイクルですね。

阿部ベトナム【※】は行ったとき35歳くらいだったんですけど、当時のベトナムの従業員の中で1番年上ぐらい。その時は、工場の中のその部門の責任者という形で。日本人の中では1番年下でした。

 

※INOAC VIETNAM CO.,LTD

 
     

※本人提供

   

阿部基盤がしっかりていたタイの会社と環境がちょっと違うんです。実はあの、ベトナムは自分が行ったときにその事業部の設備を入れるっていう、要は立ち上げに近いゼロからのスタートだったので。ウレタンを作るのが初めてっていう人たちと一から、設備を一緒に入れてのスタート。それはそれで面白さがありましたね。

※本人提供

--タイとベトナム、それぞれで違う経験ができたんですね。
入社当時、海外に行ってみたいという思いがあったとのことですが、実際にタイとベトナムに行ってみて、2つの国に対してどう感じましたか。

阿部そうですね、タイは日本人にとって住みやすいと思います。今だとバンコクの市内だって、日本食はたくさんありますし。
タイもベトナムも親日の国で、日本人に対しては優しいです。日本人っていうのが彼らからしても憧れの国になっているのかなあというのは感じますね。
アメリカや中国とはちょっと違うんだなと思います。

--タイとベトナム、文化や習慣が異なる2カ国の現地スタッフとともに働いた中で、日本人との気質と比べ何か違いを感じたことはありますか。

阿部よく言うのはタイ人のほうがおおらかで、ベトナムのほうが真面目。確かにその面はあると思うんですけど、個人個人で見たらそんなことなくて。タイ人でおおらかじゃない人もいるし、ベトナム人で言われたことを守らない、勝手にやっちゃう人もいるし(笑)
総じていうと間違ってはいないんですけど、実際自分の周りや会社でみると一般論が完全に当てはまることはないなあと思います。 国とか関係なく、個の性格によりますよね。それを理解する必要があると思います。

仕事を嫌でやめるのは寂しい

--イノアックに入社して何年目ですか?

阿部今で…2001年の入社なので。17年たったのかな?

--17年ずっと、やめたいと思わずに?

阿部いや、ポイントポイントで思いますよ(笑)
そこで嘘つく人はいないと思いますね。「そんなこと1回もないです!」って。

--やめたいと思ったこともあったけど、ここまで続けてこられた理由っていうのは何でしょう。

阿部なぜでしょうね…今もたまに思いますもんね(笑)
でも仕事を嫌でやめるのは寂しいですよね。

--嫌でやめるのは寂しい?

阿部うん。なんか他に新しくやりたいことが見つかってやめるならいいと思うんですけど。そういった意味では、自分がもっとやりたいことが他にないんでしょうね。

--つまり、今はやりたいことが会社でできているということ?

阿部そうですね。いろいろ仕事をやり始めて、これをやってみたいな、やっておきたいなっていうのがあったんじゃないかと思います。

--働き始めてから、やってみたいなというのが積み重なってきたんですね。

阿部入社する前からどうしてもウレタンを作りたくてイノアックに入社したって人は会社の中でも本当に数が限られている。
でも僕の場合は入ってから、この会社でこういうことやってみたいとか、そこで見つけられる能力があったんだろうなと思います。

--今のお仕事でウレタンを扱っていますが、ウレタンのどこがおもしろいですか。

阿部簡単に言うと、パンを作っているようなもので。

--パン?

阿部色々な原料を混ぜて、膨らんで、パンができるんですけど。そのパンを我々は切って、なにかを貼ったりして販売する。だけどそのパンを美味しく作るにもいろんな条件があって、どういった材料を使うかで出来が違いますし、どういった条件で作るかでもできるものが違います。
パンも、食パンやあんパンみたいに、中に入ってるものが違う。我々も、そういう色々な原料を持って、やっていて。いろんな用途を持っている部署なんですね。

--ウレタン部署“あるある”はある?

阿部いろんな原料を使って自分で試作するんですけど。
原料をカップに入れて、手で混ぜると、ワーッと膨らんでくる。たまにテレビの科学番組とかでもウレタンはそういう紹介の仕方をしています。まあ、そういう実験をいっぱいするんですよね。で、そうすると、混ぜるときに羽根を回転してで混ぜるんで、色の付いた原料が服についたりして。若い技術者とかは日々実験しているので、作業着にいろんな色がついていて(笑)その作業着見ると、あ、この人はあそこの担当の技術者だなあってわかるんです。

--作業着の汚れ具合で。

阿部汚れ具合で。ウレタンは色々な色を付けますし。あ、この色が作業服についているからあの事業部だなあってすぐにわかる。

--へぇー!
話が変わりますが、イノアックの社風的についてはどう感じていますか。

阿部他の会社のことは知らないので、比べることは出来ないですけど。多分うちの会社は自由なんだろうなあと。自由っていうのは、言い方よくないかもしれないですけど、自分がこうしたいからこうやっていいですかっていう提案ができる雰囲気があると思いますね。
提案したことに対して、ダメな時はだめだしっていうのはあるんですけど。そういう『提案できる雰囲気』っていうのは十分ある会社だと思いますね。

コミュニケーション能力が豊かで、専門性が高いのが優秀な技術者

--技術部としてイノアックに入社する人に求めることは。

阿部うーん、技術部で…当然、専門的な知識を持っている方が入ってくれるのがいいと思います。
一方で、これはどこの会社の技術でも一緒だと思うんですけど、技術部はどうしても仕事上、色々な部署と連携を取る必要があります。開発した製品を製造して、それを営業に対しても、お客さんに対しても説明しなきゃいけない。他にも、品質の部署とも連携を取らなきゃいけない。

--少なからず、色々な部署とのコミュニケーションが取れることが、必要なスキルの1つなんですね。

阿部その中で高い専門性がある人が優秀な技術者ですね。コミュニケーション能力を持ったうえで、専門性が高いっていうのがいいパターンだと思います。
すごく専門性が高いけど、ほかの部署の人と全くコミュニケーションをとらないとか、そういう人は仕事を進めていく上では難しいですよね。

--なるほど。

阿部あとは他の部署の技術の方でいらっしゃるかわからないんですけど、女性の方もうちはとっていて。そういう方がもう少し増えてくると、組織としてよりいいんだろうなと思います。
女性で、ウレタンの技術部から海外に駐在したって人っていないんで、今後そういう人が出てきてもおかしくないかなと。

--女性でも海外駐在は十分対応できるという事?

阿部全然力仕事とかでもないので。そういう希望があれば行ってもらったほうがおもしろいと思うんですよね。
特に、東南アジアは現地の人が女性の比率が高いですしね。馴染みやすいと思います。

※本人提供

--約9年、海外に駐在経験のある阿部さんですが、海外を意識した会社の人材教育について、どう考えてますか?

阿部そうですね、そういう仕組みがあったほうがいいんだろうなと思いますね。僕が行く前は、海外はこういう場所でこういうことを事前に勉強していって、というのはほとんどなかったんです。ぼーんと行って、学んで来いっていう。
ここ何年かで、グローバルに対応するにはどういうマインドを持ったほうがいいかとか、そういう研修のプログラムが人事でできていたりするんで、それはすごくいいことだなと思いますね。
ローカル的な知識ですとか、その会社の採算の見方がどうだとか、文化の違いをどうとらえるかっていう研修が準備されているので、行かれる方は受けておいたほうがいいんだろうなと思いますね。

--若い社員を海外に送り出す際に懸念やアドバイスはありますか。

阿部そうですね、イノアックは海外に拠点がいくつもあって、技術部でも必ず誰かが交代で行かなければならない。それが、私が行った時には5~6年経ってからだったのでよかったんですけど、最近は、入社してから海外に出向になる間隔がどんどん短くなってきている。
実体験から言うと、海外で困るのは、自分がわからないときに誰か聞ける人や、知っている人がいないことです。
日本にいる間に経験しないと解決できないことがいっぱいあるんですけど、それができる前に行っちゃうというか、日本で能力を発揮できないまま行っちゃって。なるべく日本にある程度の期間いて、実績が出来てから、行ってもらいたいなと思ってはいるんですけどね。

--向こうで力を発揮できるような下準備を、日本でしてほしいんですね。

阿部そうですね。ある程度、日本にいる間に整えていったほうがいいかなと。若い人たちが行くならそうしたほうがいいだろうなと思いますね。
入社してからすぐの間隔で行って、海外で何聞かれても分からないとなると、すぐ信頼してくれなくなっちゃうんですよね。
向こうからすると、少なからず何かしら期待をされて日本人が送られてきますし、特に現在の東南アジア地域では、困ったことがあったら日本人に聞いてくる立場にあるんで。

--どういう人が海外出向に向いていると思いますか。

阿部専門的にすごい知識がある人というよりは、色々なことに興味がある人が行ったほうがいいと思います。
行きたい人が行ったほうがいいと思いますね。行きたくないっていう人に行かせても1つもいいことないと思うんです。

--ところで、阿部さんは管理職でもありますが、日々の生産技術や素材の開発など、一連の中で技術部門での評価の仕方ってどうするんですか?

阿部それは会社の基準があるので、当然それに乗っ取ってやります。
ただ、半期ごとの評価の中で、結果のみで判断するのはちょっと難しい。半期で結果が出ないような技術テーマを行っている技術者もいますから。そこだけでは判断できない。その人のプロセスだとか、仕事の進め方も加味したうえでの判断になりますね。
研究者の1年間の活動を評価する時、この1年で結果が出ていないから、この研究はだめですっていうわけにはいかないですもんね。

--結果ももちろん大事だけれど、取り組む姿勢・過程も大事にしなければならないんですね。

阿部そうですね。だから日々見ないとわからないですね。
技術テーマによっては、明らかにやっていて結果が出ないことも当然あると思うので。そういうところを、管理職として今後見てかなきゃいけないのかなと思います。

企画・制作:ポスティコーポレーション

阿部 公彦

2001年4月


2004年7月
2007年4月
2013年3月
2015年1月
2015年5月
2018年5月

入社
発泡品事業部 開発技術部
発泡ウレタンの素材開発に従事
発泡品カンパニー(現発泡品事業部) 生産技術課
タイ BANGKOK FOAM CO., LTD. 出向
発泡品事業部 技術部 生産技術課
発泡品事業部 技術部 海外 PJ 準備室
ベトナム INOAC VIETNAM CO., Ltd 出向
発泡品事業部 ウレタン技術部 素材開発課
現在に至る

※掲載の記事、写真の無断転載を禁じます。

イノアックに興味を持ったらこちら

イノアックの職種をもっと見る

 

PAGE TOP